The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」

第 32 話
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タフツァは騎士団に、元の持ち場へ戻るよう指示した。
そして適宜、交代を取るなど、全員の休憩を要請した。

最も危険な場所に、多くの人員を置くリスクはなくなった。

テンギの炎が延焼しなかったのは幸いだ。
本来LIFEは森の生態系破壊を望まない。

遠くから風が吹く。
不自然に湿った空気だ。

「術士がいる。
当然だな、ホッシュタス!」

そう言って石を拾い、異変の起点と目した場所へ放り投げる。

カツン、と金属音がした。

潜伏を見破られて不快感を示しながら、ホッシュタスは隠れていた木から素早く別の木に移り、意表を衝いたつもりで姿を現した。

だがタフツァは、始めからホッシュタスを直視して迎えた。

ふいにググ(地場)を強めてみると、術士の魔導着からさまさまな小道具が転がり落ちた。

そこにはファラを捕らえた「ワイヤー」や、「釘(くぎ)」「金槌(かたづち)」などの呪工具、小さな「鉄板」、「苦無(くない)」のような得物(えもの)まであった。

「『人心使い』と言っても手品師の類いか。」

タフツァはわざと見下すような目で挑発したが、その前に先手を打った。

術士が木の幹に縛り付けられる。

「ここで力を出せると思うなよ・・・!!」

またしても急激な流失だ。
ビクッ、と全身に力が入ったかと思うと、ホッシュタスは意識を失ってしまった。

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