The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」

第 33 話
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テンギもホッシュタスも力尽きた。
彼らが目を覚ましたら、タフツァは尋問するつもりだった。

敵から目を離さずに、後方の少年を呼んだ。

「ウィロ、いつでも馬車を動かせる状態で休んでいてくれ!」
「わかりました!」

同伴した狩猟犬ゴウニーは賢く、鳴き声を立てない。
今は少年に抱かれて状況把握に努めていた。

タフツァが馬車に背を向けたまま近くに寄ってきた。

「手紙を書けるか?」

咄嗟(とっさ)に言われて慌てたが、カバンの中には宅配の仕事で不在時に使う、紙とペンが入っていた。

「はい!」
「伝令文書は味方にだけ読めるようにするんだ。
紙に“LIFE”の魔法陣を込めてくれ。」
「ワーガム(宿命)ですか!?」
「そうだ。」

命を宿らせることからそう呼ぶ。
武器や防具に魔法を込めるのと同じである。

ウィロは自ら初めて実用する“LIFE”の魔法陣に感動しながら、丁寧に発動した。

「敵が手に触れれば身を滅ぼし、目に触れれば視力を失うだろう。」

そう言われると恐ろしくもあった。
だが、“LIFE”に背くのは闇に生きる者の定めである。

「書き取れるか?
・・・全ての戦闘員、市民に及ぶまで、この力を以って戦うことを周知せよ。」

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