第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」
王城の壊滅により一時秩序を失っていたメレナティレに、復興のための部隊を立てることになった時、LIFE騎士団・第一部隊長のナズテインは、自らの部下の中からエッダイーグ、ジスヒルという二人を選抜し、それぞれ第十一部隊長、第十二部隊長に任じた。
騎士団結成の当時、部隊長1名と隊員6名の少数精鋭部隊であったが、現在は全ての部隊に16人の隊員がいる。
人員は旧王国騎士団から補充していた。
ミナリィ港への上陸作戦後、周囲の森で局地戦が行われ、ロマアヤ、ウズダク、メビカの将兵が次々に王国兵を捕らえていった。
メレナティレから派せられていたミナリィ守護部隊は5つであり、ドリュフォス、ジダッツ、イーゴレー、ツテンヴァ、ムーモラという5人のゼネラルと部下が捕縛を受けてリザブーグへ移送された。
そして彼らが獄舎に入ってから、毎日のように古い仲間が訪れ、LIFE騎士団の一員となってリザブーグを守るよう、説得したのである。
タフツァはシェブロンの入城までリザブーグを中心とした騎士たちの統制、城内の庶務を一手に引き受けていた。
また、会議までに最新の情報を集め、皆に知らせ、作戦を立ててはシェブロンの指示を仰いだ。
誰もが彼のこうしたはたらきを、当たり前のことと見過ごしていたが、ファラなどは、もしタフツァがいなければ自分が代わりにやらなければ、という思いでいつも敬服して見ていた。
その点、幼少時の入門で、タフツァと同世代のソマは、やはりどこか任せきりな所があったといえるだろう。
彼女の場合は運営に回らず、常に行動をともにする人々の中で、師と呼応できるようはたらきかける。
師の側に立つ者と、弟子の側にいて周囲を先導する者と。
実はこの両者があって師と弟子は一体になれるのかもしれない。
ヱイユの知らせで「長老の森」に異変が生じていることを最初に認識したのもタフツァだった。
すぐに手を打たなければ、悪魔の勢力はどこにでも拠点を作るだろう。
師の救出、上陸、入城という、最大の難関を越えるために、LIFEの仲間たちは各国各地から集ってくれた。
だが、彼らを長くリザブーグに引き止めておくことはできない。
指導者たちを国に帰し、今一層の団結を以って戦いに臨む必要がある。
タフツァは一見、会議の場でばかり話をしているように思われるが、実際はそれぞれの部屋をまわって国の現状、将来の展望、防衛戦になった場合の強み、弱み、戦い方など、深夜まで語り合うことがほとんどだった。
パーティリーダーを任された時以上の緊張、アミュ=ロヴァの牢獄で過酷な労役を強いられた時以上の疲労がタフツァを締め付けていた。
それでも敢えて戦わなければならない。
長きにわたる師の闘争の総決算が、目前に迫っているからである。
ミナリィ港の復興にあたったナズテインを呼び戻す必要から、先にリザブーグ城へ戻っていたLIFE騎士たちの協力も得て、彼はドリュフォスら、旧王国の将兵らを牢から解き放ち、遣わした。
敵として戦ったばかりの、改心も疑わしい5部隊である。
ドリュフォスにはウタック、ジダッツにはマシンク、イーゴレーにはオルグス、ツテンヴァにはラッツピン、ムーモラにはハッボスをつけた。
この5つの連合部隊でミナリィに赴き、現地の復興と警備にあたる。
バグティムトの第八部隊だけは、ミルゼオ国境付近に眠るテンギの見張りを命じられた。
ナズテインはレンガー、ヌザルム、レヂョウとともにリザブーグへ帰還するにあたり、自分の部隊から新たに二人を選抜し、部隊長とした。
すなわち第13部隊長にリョジーブ、第14部隊長にニッドゥイ。
彼らはこれまでナズテインがしてきたように、ミナリィ港でのLIFE騎士団の統制、そしてリザブーグ、メレナティレとの通信を託されていた。