The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 08 節「“LIFE”を開く」

第 09 話
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首にタオルを巻いて、サザナイアが見送りに出た。
ルアーズとアンバスの出発である。

「サザナイア!」
「ルアーズ、疲れてない?」
「ええ、ゆうべもよく眠れたわ。」
「体には気をつけて、戦闘で無理をしないようにね。」
「そう、お互い怪我には気をつけましょう。
何と言っても・・・。」

親友らしく抱き合った二人は、アンバスの方を見た。

「な、なんだよ!?」
「男女の役割が逆転していますから・・・。」
「そんなこと言ったって・・・。」
「アハハハッ。」

アンバスも男子として、強い女性の仲間である二人に引けをとりたくない。
かねてから興味のあった「機械技術」を、持ち前の魔法と合わせ、「魔法技師」という道を歩き始めていた。

メレナティレにいるトーハが、いつでも通信機器の近くにいると言っていたことから、アンバスは何度となく交信した。
そして魔力を持たない技術者であるトーハが、シェブロン博士の“LIFE”をどう自分なりに捉えているかなど質問することができた。

『アンバス君というのか、学生時代はロマアヤ大学に行きたかった、と。』
『はい。
子供の頃から憧れていたロマアヤという地に縁があって、二人の仲間とともに、何度かイデーリア大陸へ旅しました。
戦場では魔法使いとして仲間の補助を行うことだけでしたが、他国での日々はとても勉強になりました・・・。』
『きみは「電波」というものを知っているか?
今はまだ普及していない技術だが、「電波」を使えば、無線で通信や通話も可能となる。
たしか王立図書館の物理学の棚に、「電磁波」と並んで「電波」を専門に扱った書物があった。
今度リザブーグへ来た時に返す条件で、持ち出しても構わないと思うが、どうだ、研究してみないか。』
『は、はい、ぜひ・・・!!』
『なぜきみにこんなことを言うかというと、わしらの仲間のヴェサ婆さんも魔法の分野からよく「光」を研究していたんだが、彼女は純粋な物理学には興味を持っていなかった。
だがきみならば、「物理学」と「魔法」の観点から、すばらしい研究成果を上げられるんじゃないかと思うんだ。
・・・わしには魔法を扱う能力が全然ない。
その点、きみが羨ましいよ。』

アンバスは全身の血液が踊っているような、陶酔するような感覚に囚われた。
「これだ!」、と思ったのだ。

今まで探し求めてきた自分の天性、この世に生まれてきたことの意味。

最初の出会いは仲間を通じて知った“LIFE”という魔法理論であったろう。

それを更に自分専用に開きゆく“カギ”が、このトーハとのやり取りの中で見つかったような気がした。

『どうか、僕に研究させてください、きっと、きっと、LIFEのお役に立つ発表をしますからっ!』
『はっはっは、確かにLIFEの機関は大事だ。
LIFEを発展させることが師匠と弟子の約束だからだ。
だが技術というものは「先駆ける」ものだ。
未だ“LIFE”を知らない人々でも、きみが見つけ出し、実生活に応用させた技術を見て、LIFEは本当にいい人材を育てている、と理解するのさ。』

アンバスは感動した。
トーハの言葉に心を打たれていた。
全身がうずうずして、胸の奥深くから、マグマのような爆発的なエネルギーが起こってくるのを抑えられなかった。

『今日このようにお話を伺うことができ、僕は幸せでした!
これから故郷のルモア港を経て、レボーヌ=ソォラを巡り、仲間の故郷であるビオム村まで行きます。
皆で力を合わせて作戦を成功させた後、きっとお目にかかります!!』
『楽しみにしているよ。
わしは通信機器の整備でリザブーグへ行くこともあるだろう。
それからメレナティレは技術者の街だ。
大いに研究して、いつか技術を売りに来るといい。
「魔法技師アンバス」にとって、これほどの“LIFE”の開花はないんじゃないか、はっはっは。』

大きな勇気をもらったアンバスは、後輩技師をこのように励まし育てるトーハの力こそ、彼らしい“LIFE”の発現であるに違いないと感じて、熱いものが込み上げてきた。

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