The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」

第 42 話
前へ 戻る 次へ

「どうした、もう言ったんだろうな?」

悪魔は侮辱的な物言いをされると激昂する。
怒りの沸点が低いからだ。

「小僧め、その心臓突き破ってくれる!」

ニヤリと、ヱイユが笑った。
血塗られた槍の先端を掴んだ。

そして鋭利な刃を、魔力を込めて粉砕してしまった。

すぐに柄を握り返す。
力では決して引けを取らない。

ズゴン・・・!!

相手の槍の長い柄で、力いっぱい突き返した。

両手を離して落下していくのはヌゾード=ゼンである。
地面を目掛けて加速する相手に、ヱイユは更なる速度で追いついた。

羽ばたいても飛翔する力は得られない。
目の前に迫ったヱイユを防ぐため、両翼で身を守る態勢を取った。

「3・・・。」

剣からの強打を受けて左の翼に力が入らなくなった。

「2・・・。」

右の翼をヱイユに掴まれ、そこから全身へ、凍結が広がった。

「1・・・。」

パリーン・・・。

地面に背を打ちつけると同時に、棍棒のような形に変形した妖刀ヤマラージが叩き込まれた。

着地したヱイユの足元に、虹色の魔法陣が広がっていった。
“LIFE”である。

飛び散った氷の破片も、実体があればさぞかし業苦に喘(あえ)いだことだろう、ジュージューと音を立てて蒸発してしまった。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.