第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 05 節「獅子王の会座(えざ)」
「どうした、もう言ったんだろうな?」
悪魔は侮辱的な物言いをされると激昂する。
怒りの沸点が低いからだ。
「小僧め、その心臓突き破ってくれる!」
ニヤリと、ヱイユが笑った。
血塗られた槍の先端を掴んだ。
そして鋭利な刃を、魔力を込めて粉砕してしまった。
すぐに柄を握り返す。
力では決して引けを取らない。
ズゴン・・・!!
相手の槍の長い柄で、力いっぱい突き返した。
両手を離して落下していくのはヌゾード=ゼンである。
地面を目掛けて加速する相手に、ヱイユは更なる速度で追いついた。
羽ばたいても飛翔する力は得られない。
目の前に迫ったヱイユを防ぐため、両翼で身を守る態勢を取った。
「3・・・。」
剣からの強打を受けて左の翼に力が入らなくなった。
「2・・・。」
右の翼をヱイユに掴まれ、そこから全身へ、凍結が広がった。
「1・・・。」
パリーン・・・。
地面に背を打ちつけると同時に、棍棒のような形に変形した妖刀ヤマラージが叩き込まれた。
着地したヱイユの足元に、虹色の魔法陣が広がっていった。
“LIFE”である。
飛び散った氷の破片も、実体があればさぞかし業苦に喘(あえ)いだことだろう、ジュージューと音を立てて蒸発してしまった。