The story of "LIFE"

第 08 章「星辰(せいしん)」
第 01 節「萌黎(ほうれい)の朝(あした)」

第 06 話
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老戦士は往時を偲んで話してくれた。

「大公は、その身にもしものことがあったなら、ご子息ザンダ様を、いずれはあなたの元へ送り出したいとおっしゃいました。
わたくしとしましても、戦乱に次ぐ戦乱の日々、大切な後継者を、どこまでお護りできるか分かりませぬ・・・。」

シェブロンは胸に手を当てたまま聞いていた。

「万一、ロマアヤが滅びようとも、ザンダ様があなたの元におられれば、きっと将来、復興を遂げてくださると信じております・・・。」

大変な申し出である。
とはいえ、シェブロンはこの場合、謙遜することは先方に対して失礼にあたると思った。

「リュエンナ様の願いもお聞きしています。
ご子息を魔法使いに育てたいと。」

ムゾール=ディフは言葉が詰まってこれ以上話せなかった。
亡き君公の心が、今もシェブロン博士の中に、そしてザンダの中に生き続けており、彼自身の中にも、それが確かに生きていると感じたからである。

「将来必ずロマアヤの後継者としてお連れします。
それまで、どうかこの地を護り通してください。」

老戦士ムゾールも、騎士ルビレムも、幼い君主を託すことができた後は、死を覚悟で戦おうと考えていた。
しかし、シェブロンはザンダを育ててここへ連れてくると言ったのだ。

ゼオヌール11世となった皇子が、立派に成長してロマアヤの地を踏んだ時、すでに国が滅んでしまっていたら・・・。

一度は消えかけた復興の熱が、炎が、再び大きく燃え上がった。
その炎はやがて、彼らから伝播して、残された民全体にまで広がっていくことになる。


少年ザンダは、まだこうしたいきさつを聞かされていなかった。
三角帽子に髭をたくわえた、老バイキングのような出で立ちのムゾール=ディフが、なぜ自分を見て感激するのか不思議なくらいだったのである。

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