The story of "LIFE"

第 04 章「開戦」
第 03 節「人生の師」

第 06 話
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夜、王宮から帰ったシェブロン博士は、食事までの時間を部屋でファラと過ごした。
ルアーズは実家に戻っている。

博士は剣と魔法の伸展具合を聞いた。

「剣の方は順調です。
全身が筋肉痛になりました。
午後はルアーズさんに、・・・これをお借りして、拳法の特訓をしてもらいました。」

ファラは両腕に付ける「アームバンド」のようなものを見せた。
前腕を外から覆って内のバンドで止める。
小手の形をしているが、布製で中には砂が詰まっていた。

剣士も素手の戦闘に通じておくことで多大な戦力となるのである。

特訓では、彼女の動きの素早さに、回し蹴りの直撃を受けて川に落ちてしまったと話した。

「はっはっは。
充実しているね。
魔法の方はどうだい。
誰でも得意な魔法とそうでないものがある。
大抵の術士は得意なもの幾つかを習得して、それを駆使して戦うのだが。」
「今日は『パティモヌ』を勉強していました。
川の流れを速めたり、遅くしたりしました。」
「自然の重力に逆らって、大量の水を堰(せ)き止めるとなると、相当魔力を消耗しただろう。
魔法使いが心得るべき節約のコツは、できるだけ自然の力を借りるようにして目的を遂げる所にある。」
「一定の魔力ではすぐ、堰を切ったように流れました。
強化し続けて、維持できなくなり、決壊を繰り返します。
堰き止める戦法よりも、流れを速める戦法が節約になりますね。
あとこの前、ヴィスクが山の地下水でぼくに攻撃したことがありました。
空からの、滝のような水をロニネで受けたんです。
あんなことができるでしょうか。」
「奴は、山と森の主だった。
支配者だからこそ使える力だよ。
そういう絶大な力を使う場合には、やはりメゼアラムで借りるのがいい。
魔法は使い込むほどに親しむことができ、加減も分かってくる。
バトルフィールドのどこに、どんなエネルギーが秘められているか見極めて、使う魔法を選ぶんだよ。」

この観点からすると、ファラが「パティモヌ」の演習に川を選んだことは適切だったと言える。

「水の力の操作には、重力も冷熱も、電気も関係する。
『パティモヌ』に関してはよく経験できたようだから、明日は『クネネフ』を使ってみなさい。」

階段と床板の音が聞こえてきた。
ノイとトーハが夕食を運んでくれたのだ。

「体がうんと成長する時でもある。
ギリギリまでのトレーニングと、消費したエネルギーや栄養の摂取、そして若い時は血肉を作る畜産物もきちんといただいていい。
食生活というのは時代によって、また年代によっても変化するものだからだ。」

彼は十分に与えられる食事に感謝した。
心地よい疲労を覚えつつ、就寝の時間までは学者のように書物を読み解いていかなければならない。

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