第 13 章「革命機関紙」
第 01 節「エピローグ」
紛糾した議場が、ようやく落ち着いてきて、答弁再開となった。
「保守党首長!」
議長の声が響くと、明らかに激昂した様子で首長が立った。
「そんなに我が国の法制度が気に入らなければ、出ていけばいいではないか!」
右派は立って「そうだ、そうだ!!」と加勢したが、移民の力なくして発展はないことを、過半数が認識している。
罵倒する側は、次第に力が入らなくなってきた。
この時、またしても彼の挙手があった。
議長はしぶしぶ許可する。
「それでは逆戻りです。
移民が去れば、後に残るものは閉鎖した鉱山ばかりではないですか!」
「十分だ!
豊富な地下資源を再び活用すればいい!!」
「放射性鉱物など、今更誰が掘るのです!
皆、辟易(へきえき)していますよ!!」
今の割り込みは首長のほうがルール違反である。
だがこれによって、決定的な矛盾を引き出すことに成功した。
そして場内はざわつくこともなく、静まった。
左派が挙手し、指名された。
「鉱山の閉鎖を覆すことはないと、議会で合意したはずです。
反古(ほご)にするのですか?」
改革派は支持者との公約に、鉱山の不使用を掲げていた。
感情的になった保守党の首長は、椅子を蹴って退席しようとした。
そこですかさず追い討ちの挙手をかける。
もはや議長は保守党の敗北を認め始めていた。
「皆さん!
我が国の発展に欠かすことのできない移民の声を、政界に届けましょう!!
永住外国人の参政権、とりわけ選挙権を実現しようではありませんか・・・!!」
議場は静まり返ったが、扉が開き、明るい日差しが射し込んだ。
老紳士が拍手した。
老婦人も続く。
別の扉が開き、また一つ、また一つと、議事堂の扉という扉は開け放たれる。
そこには移民も、ネイティブと呼ばれた人々も入り交じり、笑みを湛えて喝采の拍手を惜しまなかった。
場内の人々も一人立ち、二人立ち、次第に保守派を除く総勢が立つと、議長自ら促して保守党をも立ち上がらせ、首長の手を取って、ついにはスタンディングオベーションとなった。
改革派の代表が彼の手を取り、議長が保守派の首長の手を彼の手に重ねた。
こうして中道、改革、保守の全会派が手を取り合ったので、議長は宣言した。
「・・・我が国の永住外国人参政権を認めます!!」
歓呼の声がこだまして議場を埋め尽くすと、その声は場外へ、島全体にまで波及していった。
「闡提嶼(せんだいしょ)」として忌み嫌われた島々は、万国万民の熱望によってがらりと様相を変え、全会一致で「宝塔群島(ほうとうぐんとう)」と命名されたのである。