第 13 章「革命機関紙」
第 01 節「エピローグ」
議事堂への道はすっかり平穏を取り戻していた。
一方で、議会及び傍聴席は、外まで聞こえるほど騒がしくなった。
北オルブーム港から「闡提(せんだい)本島」に入った船が、旅行者を上陸させている。
各国の移民を受け入れるとあって、かつての陰気な鉱山地帯は姿を変え、観光客もたびたび訪れる。
杖を付いた高齢の紳士が、上品な老婦人の手を引いて降りてきた。
「向こうだね、行ってみよう。」
「ええ。」
保守派が多数を占める、半ば閉ざされた国民性の中へ、萌え出ずるグローバリゼーションの芽は今、次なる時代への高鳴りとなっていた。
そのため内政は揺れているようだ。
「みんなの子孫も移民しているようですよ。」
「素晴らしいじゃないか。
きっと発展するだろう。」
ポカポカと暖かい。
紳士が上着を脱ごうとするのを、婦人が手伝った。
だんだん大きくなってくる場内の怒号を聞いて、微笑み合った老夫婦は実に仲睦まじい。
「元気があっていいねえ。」
「はい、あの熱はきっと、良い方向へと向かうでしょう。」
老婦人は日傘を取り出すと、自分だけでなく夫の上にも差そうとした。
その手を取って、老紳士は傘を持ち、二人仲良く議事堂の階段を上がっていくのだった。