The story of "LIFE"
第 13 章「革命機関紙」の詩
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冷たい暁の時、騒めき出す街

まだ温かい、刷り立ての新聞を
両腕いっぱいに抱えた少年が一人
白い息を呼吸しながら
頬を紅潮させて、駆けて行った

大人達は生気を無くした顔をして、足早に
機械的な動作のプラットホームへと向かう

「どなたか、買っていただけませんか」

やがて婦人たちが出歩き始める頃
新聞の安値と同情で、数部が売れて行った

「嬉しいな、ここに書かれたことがもし 
 本当になったら、どんなに良いだろう 
 どんなにお母さんが楽に暮せるだろう」

外国の言葉で、
「日の出」を意味する名の新聞は
無数の涙と、憤激に突き動かされた、
真正の革命家によって書かれたものだ

心無い人間の、
露骨な肩で突き飛ばされても
少年は悲しい涙を見せることなく立ち上がり
無残に散乱した、
大事な一部一部を拾って
声も惜しまず、
再び街路を駆けていくように
狡猾な、
卑怯な連中から怨嫉され
名をば穢され、
命からがらに運動する彼もまた
今は一人、
あまりにも無念なる涙を持って
先人を偲びながら、
常に「生きる意思」を
自ら鼓舞せずにはいられないのである

彼がひとたび筆を執り、
「誰人も、不正に打ち勝つ権利がある」
「さあ、立ち上がろう」と呼びかけて、
進んで先頭に立ち、
雄渾の指揮を見せる時
若き青年の胸は激しく揺れ動く
少年たちの心は高鳴り躍動する
「我らの理想、万歳」と。

けれども、ああ、憐れなり
力を得た民衆はエゴ剥き出しの暴徒と化し
彼は深い苦悩に喘ぐ

「野獣どもに『武器』を与えたのは貴様だ」

獄卒の責めに、一瞬、
自らの理想それ自体を疑う

「理想を捨てよ、犯罪者め!」

過酷な問詰と葛藤は神経を擦り減らし
精神に異常を来すまで、
極限の思考を繰り返す

死に際して、最後に彼は勝った
自らの過ちを知り、
理想の正義を確信して・・・

生死は流転して時を経る
過去の遺産を受け継いだ我らは
社会革命ではなく、
自らを変革する道を知った

哲学なく、しかも満たされた社会は
餌付けによって飼い慣らされた獣だ
不満に激怒した民衆は暴徒と化した

二度と同じ過ちは、繰り返すまい
人間は人間であって、獣ではない

人間の道、自と他とを限りなく潤す、
“内面変革”の道
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