第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 05 節「妙法広布の大願」
立派な青年に育った御者のウィロが質問した。
「先生、“LIFE”を正しく学ぶために、どんな本を読むのがいいですか。」
「ラオンジーウ先生から教わった、偉大な民衆の物語がある。
小説として成立しているが、実在の、無数の庶民の英雄群を描いた史実なんだ。」
瞳を輝かせて、重ねてウィロが求める。
「それは、何という小説ですか・・・??」
「『ヒューマン・レヴォリューション』。
続編に、『ニュー・ヒューマン・レヴォリューション』がある。」
真面目な生徒たちは、そのタイトルを、しっかりとノートに書き取った。
子供たちと席を並べて聴講するスヰフォスの隣に、ビオム村から“LIFE”を求めてやってきた少女メユウが座っている。
目にいっぱい涙を湛(たた)えて、ノートに書いた文字を復唱した。
「『ヒューマン・レヴォリューション』・・・!!」
レボーヌ=ソォラから旅して来たオリーヴァ、クローワも、互いにノートを見合って頷き合った。
「そうだ、わたしたちがずっと、求めてきたものだわ・・・。」
「うん・・・!!」
フィヲを慕っている洋裁屋の娘ロワムもいた。
「先生、きっと読みますから、少しだけ、どんなお話か教えてください!」
「世界が“LIFE”を排斥し、弾圧して、天災・人災に遭って絶望で覆われていた時、一人立ち上がり、万人に再び“LIFE”を伝えていった人がいる。
彼には偉大な師匠がいた。
弟子もまた偉大だった。
師弟ともに貧しい時代だ。
彼らに呼応して立ち上がった民衆もまた貧しく、病気がちだと言って嘲笑された。
しかし“LIFE”こそ万物を貫く妙法であるがゆえに、そこへ連なる民衆も必然として偉大になっていった。」
エナを心配してルング=ダ=エフサから来たルオも、熱心に聞き入っている。
外で猟犬のゴウニーが走り回り、鳴き声を上げた。
御者ノスタムも講義室に入ってきた。
後方で背もたれに寄りかかっている老婆ヴェサの隣に座る。
今度はエナが質問した。
「わたしたちは剣と魔法の戦いを起こしました。
未来は何を武器に戦いますか・・・?」
シェブロンの瞳も輝く。
「いい質問をありがとう!
私は本来、魔法を広めようとしているのではないんだ。
剣もなく、魔法もない世界で、どうやって“LIFE”を広めるか。
それには“LIFE”に生きる人を育て、各人が輝いていくことが最も大切だと思っている。
あなたの人生そのものが“LIFE”となって輝き、その光で人々の心を、世界を変えていく。
これを『妙法広布』というんだ。」
モモルは得意そうに言った。
「わたしたちが“LIFE”の魔法陣を、広く布陣したように・・・!!」
「その通り!!
上空から見た、あなたの“LIFE”は本当に素晴らしかった。
一生忘れないよ。
あなたの一念が“LIFE”の形を現して、一切の悪魔を退治した。
同じことが誰にでもできる。
人間の一念は、それほど強く、偉大になることができるということだ。」