第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 05 節「妙法広布の大願」
職を無くした黒ローブの人々を迎えたのは、各国の手厚い就労支援だった。
普通の職に就いてみると、放射性鉱石の採掘よりもはるかに良い生活ができた。
町や村の住人から親切にされ、全うな家庭を持ってみると、もはや悪魔や黒魔術などどうでもよくなった。
彼らは生まれて初めて人間らしく生きられる環境にありつくことができたのだ。
更に各国は、教育理念の中心に“LIFE”を置いた。
“人間教育”と呼ばれるこの理念は、学問を教えるだけでなく、「何のために学ぶのか」を問いかけた。
生徒たち、学生たちは、学ぶ目的を自ら考え、互いに問い掛けて、その意義を深め合った。
まだ子供のすること、考えることである。
時に間違うこともある。
そんな時、「本当にそれでいいのか?」と問われると、大半の者は親友の一言にハッとして、軌道修正できた。
しかし、まだ断じ尽くさない“元品の無明”を抱える生命は、時に恋愛感情の嫉妬などに破れて悪態をついた。
一度道を逸れてしまうとなかなか戻れないものだ。
偏執(へんじゅう)して“LIFE”の道も半ばに離れてしまう者がいた。
彼らを励まそうにも、呼び戻そうにも、「もう関係ない」などと言って無関心を決め込んだ。
多くの場合、代替案はなく、ただ“LIFE”を拒んだ。
一定の距離を取った。
ごく稀に、「“LIFE”は真実ではない」と吹聴して、道を逸れた人々を集める者がいた。
彼らは結局、“LIFE”の行者に邪義を破られて、逆上と敵対行動を繰り返すようになった。
一部の敗北者に生きる道を与えたように見えても、それは人間の歩む道ではなく、悪魔に成り下がる道である。
自己であれ他者であれ、“LIFE”から遠ざけるほどの悪事はない。