第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 05 節「妙法広布の大願」
あれから体調を取り戻したタフツァは、師シェブロンに命じられて、オルブーム大陸の北にある「闡提嶼(せんだいしょ)」に潜入していた。
本来、複数人で行動することは危険であるが、かつてザベラムに潜入したことのある者どうし、ヤエを伴っていた。
二人は夫婦になっていた。
今回のミッションは、闇の一族の残党たちが何をしているか調査し、悪事があれば対策を講じることだ。
すでに分かっているのは、タフツァが止めたことのある「核融合」の燃料、すなわち放射性物質の採掘である。
多くの従事者は被爆していて、ここの寿命は短かった。
食料調達に出入りする商人に扮しての活動となる。
「米が入りました、いかがですか?」
「おう、くれくれ。」
すぐに人だかりができる。
列を作って並ぶので、ヤエが計量して対価を得ていた。
「ウラン鉱石が売れたんだ。
しばらくは食っていける。」
一体、誰が核燃料など買うのだろうか。
「新しいヘキサゴンの塚守がだいぶ稼いでいるのさ。
おかげでおれたちも鉱石が売れるってわけだ。」
首領を失って凶悪さはないが、やろうとしていることは極めて危険であると言える。
各地で悪鬼を倒して塞いだ「負の六芒星」に替わり、新たな六芒星を描くべく、少なくとも六人の術師が暗躍していることが分かってきた。
「あなた、先にランラ族領へ戻っているわね。」
「ああ、気を付けて。」
ヤエが通信のためにオルブームへ立つと、黒ローブの人々は声をかけた。
「今度は豚肉も頼むよ!」
「仕入れてくるわ。」