第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 04 節「元品(がんぽん)の無明(むみょう)」
「あなたは、・・・前にもどこかで?
あの時、髪飾りをくれた・・・!?」
ユッカとリーシャは“LIFE”の中心に立ち、早くも転位しようとしていた。
「そうよ、フィヲさんに差し上げて!」
光の中へ消える間際、振り返ってもう一度微笑んだ顔がファラの脳裏に焼き付いた。
恍惚として魔宮の崩壊に巻き込まれそうになるファラを、フィヲは心配そうに、そしていとおしそうに見た。
『八部衆のみんな、エナちゃん、レナフィー、本当にありがとう!
先にお城へ帰っていてね。』
竜たちは声を揃えて鳴き、何とも美しい音色を響かせた。
「ファラくん!!」
ハッと我に返り、振り向いたファラは涙を流していた。
「わたし、幸せよ・・・!!
抱きしめて。」
傾く床面を滑って、フィヲをしっかりと胸に抱くと、今までで一番の笑顔がはじけた。
二人を護るように、旋回した八匹の竜たち、その乗員たちも、歓呼の声をこだまさせ、空の彼方からは再び、美しい華々が降り注いでいた。
「おつかれさまでした・・・!!」
「ありがとう、これからもよろしくね!!」
まばゆい光が、ほとんど垂直に走って、二つの“LIFE”の魔法陣の中心部をつなぎ、リザブーグ屋上階まで届いた。
役目を終えた神獣マナゾイフノは、七虹龍の背に負われ、遠く「長老の森」へと運ばれていった。
つまりは、毒で病んだ長老の木が、マナゾイフノという化身となって、世界を狂わせていたと言えるだろう。
魔の居城「天宮魔神殿」は、最後の魔宮まで粉々に崩落し、舞い飛ぶ美しい華に清められ、単なる塵となって消え去った。