第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 03 節「諸余怨敵皆悉摧滅」
「どんなに知識を身に付けても、“LIFE”はお前に都合よく利用できない。
却って悪心の全てを断じ尽くすだろう。」
ヨムニフ大憎生(だいぞうじょう)は、悪魔王の杖にしがみつくことで、辛うじて自己の目的に動くことができた。
ファラに八つの太刀を叩き込まれ、壁まで打ち付けられた時の血ヘドを吐いて言う。
「ヘッ、閉じ込めたつもりらしいが、俺様が世界の中心だ!
いくらでも闇で包み返してくれる・・・!!」
どす黒い渦を伴って、魔宮を支える床面から両手で這い出して来たものは、まさしく悪魔王ジッド=ネイヂュオンだった。
黒いマントを翻し、黒甲冑を身に纏(まと)う姿はおぞましく不気味だ。
くわっ、と赤い眼光が差した。
振り下ろされるシックルにファラが飛び込み、剣で受ける。
そのまま猛獣の如き勢いで散々に打つ、押し出す、叩きのめす。
剣の柄で首を突き上げたかと思うと、持ち直して首を容赦なく刎ねた。
精神体の頭部が分離され、金属の兜は転がって音を立てる。
まだ立っている胴体に、回転を込めた猛強突を見舞うと、捻転して飛び、鎧の残骸だけが天を仰いだ。
「ザコめ!
次を喚んだらどうなんだ!!」
ヨムニフは、頼りにしていた悪魔王の杖まで粉々に砕け散り、ガクガクと身震いするだけの、本来の無能力者に帰してしまった。
目を真っ赤に血走らせ、頭の血管を浮き立たせて激昂しているようだが、その表情は恐怖で青紫色に冷(さ)めていた。