第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 03 節「諸余怨敵皆悉摧滅」
テンギを圧倒していたヱイユは、魔宮の六方位から来る衝撃波で、甲羅焼きにしていたロニネを破られ、寸での所を逃がしてしまった。
「ぼくに戦わせてください!」
「ああ、決着しろよ。
取り返すんだ。」
「はい・・・!!」
兄弟子の温かさに目頭が熱くなる。
ヱイユは鬼神六芒将の各個撃破に向かった。
「今日はお前を倒しに来た。
一対一で勝負だ!!」
フィヲは反対しない。
手出しをしないつもりもなかった。
「あなたたちは“LIFE”に完全包囲されています。
だから“LIFE”のルールに従ってもらうわ。
・・・どちらかが生命を落とす前にわたしが止める。
さあ、戦って!!」
テンギはこの時すでに、フィヲとまともにやり合えば完敗すると知っていた。
魔法の応酬で太刀打ちできないからだ。
勝てない相手のルールで戦うことになるとは。
それでも宿敵ファラとの決着には強い執着心を押さえることができなかった。
六芒星は最後の力を振り絞り、テンギに力を注ぎ込んでいた。
「お前も魔法を使え!
遠慮なくいくぞ・・・!!」
「小僧、生きて帰れると思うなよ・・・!!」
嘶(いなな)く前肢を無視して、残る地に着いた脚という脚を、横凪ぎに斬る。
巨体が大きく傾く。
踏ん張って体勢を立て直そうとする。
そこをゾー(重力)で引き倒す。
倒れかかった胴へ、襷(たすき)斬りを浴びせる。
トリプルソードで受け止められる。
ナックルが掴みに来る。
蹴って離れる。
反対側の斜め下から斬り上げる。
手を着いているので胴に入る。
「ぐふぉっ・・・!!!」
すかさず正面に強突を撃ち込む。
普段腕組みしている一対の腕でガードを受けたが、なお力で突き破り、テンギのチェストを打ち貫(ぬ)いた。
巨体が後方へ倒れる。
両ナックルが掴みに来て、一歩下がる。
槍を着いて体勢を持ち直そうとする脚を、もう一度凪ぎ払った。
ドシン、と横転する。
もうとどめを刺す以外ない。
鋭い無刃の剣先が、テンギの額に突き刺さるように伸びたので、フィヲは保護しようとしたが、瞬時に剣先の魔法陣を見て取った。
それはファラに残された八つの魔法、インツァラ、グルガ、ロニネ、ゾー、テティムル、ドファー、メゼアラム、トゥウィフによる“LIFE”のスペクトルだった。
剣打が当たる直前に“LIFE”の呵責が額を叩き割ると、超強突で破壊神の体は浮き上がってノックアウトとなった。
有無を言わさぬ追撃でジャンプしたファラを見て、ルアーズもザンダも感極まったが、フィヲが割って入って抱き止めた。
「勝負ありッ!!」
テンギは戦いきったように宿命の二十一体を横たえて呼吸している。
「・・・これで、いいのか?」
「うん。
あとは先生をお護りするの。」
「テンギは見ておくよ。
少し休んでほしい。」
今、敵味方の中で一番魔力を使っているのがフィヲなのだ。
ファラはフィヲの体を抱いたまま、ヒーリングを与える。
「うれしいなぁ、こんな日が来るなんて・・・。」
頬を伝わる涙は、ファラが無事に宿敵を破ったことへの感謝だった。