第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 02 節「千界の破壊神」
六芒星最後の頂点は南西、ミナリィ港の西にある。
ニッドゥイの第十四部隊が見つけて、リョジーブの第十三部隊に協力を求めた。
六芒星の南西であるが、封印の地ディスマを囲う五つの頂点の中でも南西に位置し、「南西塚」がある。
リョジーブ自身は港を離れられないため、彼の部下たちが標的周辺の警備にあたり、ニッドゥイと部下たちが敵を叩く。
こうして見てくると、六芒星と縁のある鬼たちの肌の色は、北が赤、北東が橙、南東が黄、南が緑、南西が青、北西が紫だった。
つまり、逆方向魔法陣ではあるが、その色は“LIFE”のスペクトルに一致する。
青い鬼たちは、ぴったりと木に張り付いて、哨兵の役目を負っているらしかった。
「警戒心が高いな。
どれかが騒ぎ出せば総出で来るだろう。」
「こちらも総力戦で行くか?」
「いや、来ないのは却って都合がいい。
剣を振るわずとも、方陣を張ってしまおう。」
LIFE騎士たちは遠巻きに、身を隠しながら、地図の上に置いた頂点へ急ぐ。
それでも青鬼の近くを通らざるを得ない者がいた。
悪鬼は仲間を呼び集め、少数移動中の騎士に襲い掛かった。
「引き受けよう!
先を急げ!!」
リョジーブの隊員がザコを引き付け、ニッドゥイの隊員が布陣に走る。
そしてニッドゥイ自身はボスとの一騎討ちを狙っていた。
次から次へと雲集する鬼を薙ぐ、押し返す、転倒させる、蹴散らす。
その間に方陣を担当する騎士たちは走った。
すると、ちょうど布陣しようとした地点に、座り込んで頑と動かない巨体があった。
これが乱鬼ヅッタだ。
青鬼たちが守っていた、六芒星の頂点付近から離れての単独行動である。
ニッドゥイに知らせるにも、時間稼ぎが必要となる。
隊員たちは互いに指を差してボスの居所を伝え合ったが、ついに瞑想を解いてヅッタが起き上がり、殺意を露わにした。
『捕って喰らうには貧相だな。
いや、脚の肉は旨そうか、ガッハッハッ!』
腕が四本ある。
両側頭に角が見える。
ニッドゥイ配下で攻守と魔法にも長けた騎士エムラスは、冷静に身構えた。
「お前は三分と持つまい。」
挑発に、鬼神は髪を逆立たせ、口を耳の辺りまで釣り上げ牙を剥く。
飢えた肉食獣の如き獰猛さで襲い掛かると、巨大な手のひらでエムラスの頭部を掴もうとした。
だがなんと彼は、その手首を剣の峰で打って巨体ごと横転させた。
更に盾をヅッタの顔面へ打ち当て、喉元を鋭く突いた。
転がった巨体の上に馬乗りとなる。
グローブで右から左から、“LIFE”を込めた拳で殴打した。
ヅッタはパンチ十発ほどでダウンを喫し、うなだれてしまった。
ニッドゥイが駆け付けた時には、すでに“LIFE”の方陣も成り、そこら中から業苦の唸り声が上がっていた。
「エムラス、よくやった!」
「いえ、“LIFE”は本当に強いですね。」
古来、邪悪な術士たちによって幾度となく世界を混乱させた六芒星は、こうして全ての頂点を封じ込められた。