第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 02 節「千界の破壊神」
彼女の言葉がいつまでも頭の中で繰り返された。
「そこが、ぼくの行く世界でもあるのか・・・?」
独り言だが、フィヲには、自分への問いかけに思われた。
「そう!
わたしとあなたは二人で一つ。
離れることは絶対にない。」
ファラはこの時、フィヲから離れてはならない、という一念が、脳裏に、心に、生命に刻まれたように感じた。
彼には払拭されない弱気が、常に、どこかにあったのだ。
いつか強敵に破れて、生命を落とすのではないか。
あの時、四属性を失ったように。
またあの時、亜流四属性を失ったように。
もし再び生命の危機が訪れて、護りきれなかったならば、我が身と引き換えにフィヲを逃がして、自分一人が倒れよう。
こうした悲観があった。
それは母譲りの自己犠牲だったかもしれない。
否、ムヴィアは最後の瞬間まで諦めてはいなかった。
だとすればファラ自身に固有の、「宿業」ともいうべき悲観である。
今、厚く覆われた悲観の巌盤に、一筋の光が、矢のように突き刺さった。
フィヲから離れてはならない。
眼前に迫る決戦において、最も重要な命題が定まった瞬間だった。
「どんなに苦しい戦いになっても、忘れないでね。」
暖かな光の矢が、遂に巌盤を砕き、打ち破った。
まざまざとフィヲの目を見て、ファラは言った。
「・・・すごい魔法だ。
何ていう、魔法?」
「『結合させる』、つまりは・・・。」
「『フィヲ(結合)』か、わはははっ!!」
「もう!
からかうのはダメ!!」
室内にいて周囲にはばかることもなく、しばらく二人して笑い転げていた。