第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 02 節「千界の破壊神」
史上最悪の大量殺戮兵器を停止させ、無害な鉱石に帰(き)せしめたものは、実に“LIFE”の師弟を貫く熱願だった。
タフツァは核融合のエネルギーをも奪い尽くして、絶対零度の空間を維持するだけでなく拡大させた。
しかしキュキュラ(総力)の何倍も魔力を放出し続けた連続発動は、彼を死の淵までさ迷わせる結果となってしまった。
看護にあたるヤエに替わって、ベーミラが招集された。
シェブロンは片時も離れず、タフツァの急激な消耗を徐々に和らげるよう努めていた。
獅子王の会座にはこの三人の他、護衛騎士ノイが控え、ファラとフィヲも呼ばれた。
「タフツァ君は当分安静にさせなければならない。
編成を変えて、ファラ君の作戦を頼みたい。」
「はい!
テンギとグルゴス帝、それに神獣も来るでしょう。
おそらくはヨムニフも逃げ延びたはずです。」
「私とノイ君も行く。
・・・ヨムニフとの対決は、全て任せてもらいたい。」
壮絶な覚悟が師の五体に漲(みなぎ)っていた。
ファラが言葉を失っているので、フィヲが応えた。
「わたしが先生をお護りします。
ご安心ください。」
「ありがとうフィヲ。
だが、きみはファラ君の戦いから瞬時も目を離してはならない。
・・・敵は一人ではないからだ。」
師の前方へ進み出たノイが意を述べる。
「外側から神獣と魔宮を撃墜したとしても、ヨムニフを倒したことにはなりません。
先生にはヨムニフとの直接対決に専念していただきたいのです。
城内で戦う人員と、脱出方法も確保する必要があります。」
当初ファラが考えていた、魔宮包囲による孤立無援策だけでは足りないようだ。
脱出は七虹龍の力を借りるとして、誰が突入するか。
「少しお時間をください。」
タフツァの容態も悪いので、彼はそう言って自室へ戻って行った。
振り向かずともフィヲが後ろにいる。
「人数が足りないな、うーん、どうするか。」
思わず笑い声が漏れた。
「作戦、得意でしょう?」
「空中戦だからね、いろいろ考える必要がある。」
「前に先生が、わたしだけに話してくださったの。
世界中の同志が、先生を求めて集ってきている。
中心にはシェブロン先生。
でも、集まったのは味方だけではなかったの。
黒龍や黒騎士も、黒ローブも、悪魔も敵も、みんないた。
しかもね、誰もが“LIFE”の実現を待ち望んでいたの。
・・・そこが、わたしの行く世界だよって。」