第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 01 節「師敵対を弔(いぐる)む」
上空の魔宮から一部始終を見下ろしていたヨムニフは、闇の首領らが全員討たれたのを歯噛みした後、配下の者に「滅尽砲」の準備を命じた。
その時すでに七虹龍の力で浮遊装置へ接近していたタフツァは、砲台にエネルギーが充填され始めたことを確認した。
『“LIFE”の行者よ、どうやって食い止める?』
「大量破壊兵器は即、反“LIFE”の産物です。
方陣で止まるでしょう。」
話しながら、早くもタフツァは「滅尽砲」の照射口を強力な“LIFE”の魔法陣で塞いでいた。
『砲口はそれでよかろう。
奥の装置は高エネルギーになるぞ。』
「魔力の増幅が感じられます。
ファイエの文字を中心に置いている。
魔法によって抽出された元素が、放射性物質が、核融合を始めようとしている。
・・・目を閉じていても、発動が引き起こされる座標が分かるのです。」
龍王は感嘆した。
舌を巻いた。
何という自信に満ち溢れた青年だろう。
“LIFE”の究極魔法陣を、「滅尽砲」動力装置の中心部に重ね、最大限、標的への弱体、自身への強化を図る。
大気からのヒーリングも始まった。
“LIFE”を願う一切の有色無色、有情非情の生命が、彼に味方した。
フィヲのレナフィーに導かれ、八色に輝く天竜八部衆も集い来たった。
煌めく“LIFE”のスペクトルが、邪悪なる核融合の動力装置を抑え込むように威光勢力を増し、鮮烈なまでの“光”となる。
絶大な力を注がれたタフツァは、キュキュラ(総力)を何乗にも増大させた魔力を以って、ただ一点に狙いを定めていた。
起爆装置を閉じ込めるようにして、渦巻き起動された攻撃型ロニネの球体が、その内側が、極限の冷気に圧縮される。
そのまま一気に、零下二百七十三度のゼロケルビンを現じる。
点灯していた装置のライトは皆消え、回転していたモーターの音も全て止まる。
動力の完全停止である。
「・・・海まで、落ちろーッ!!」
諸天より委託された魔力が、タフツァの魔力の器が、どんなに大きかったとしても、生身の人間には限界がある。
これが連続発動できる最後だ。
陸地に落とせないため、南方へ押し出す天竜たちの力を借り、急激なゾー(重力)によって魔宮を崩落させる。
だが逆らうように引き千切り、浮遊する力がはたらいた。
なんと神獣マナゾイフノが、魔王の居城であるドーム部を分離させ、何対もの腕で背に負って、更に上空へ待避していったのだ。
大半の魔族を失った伽藍(がらん)堂は落ち、海面に当たって砕け散った。