第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 01 節「師敵対を弔(いぐる)む」
天然の非魔法場と言われた断崖の孤島ルング=ダ=エフサで、地表から星へと還るエネルギーの流れを跳ね退けて数々の発動を遂げた少女エナは、実に“LIFE”によって自己の本地に目覚めていた。
身近に過ごしたシェブロン博士の何と温かな人柄だったことか。
世界中で活躍するという彼の教え子たちが、師の志を継いで激戦に身を投ずる中、“LIFE”を現し、誰にでも発現できるように広めてくれた。
彼女は今、どうしても決戦に馳せ参じ、共に戦いたいと、朝な夕なに“LIFE”を願い、祈り続けた。
家族は皆、驚いていたが、母と祖母がエナの才能を役立ててもらおうと、後押ししてくれたのである。
「おばあちゃん、わたしどうしても先生の元に行きたいの!」
「行っておいで。
あなたにしか果たせない使命があるのよ。
生涯、シェブロン先生の弟子に成り通しなさい。」
母も言った。
「世界で最強の力が“LIFE”だと、先生はおっしゃっていたでしょう。
そのことをあなたが証明するの。
・・・戦いが終わったら、元気に帰ってきてね。」
ノイは少年剣士ルオに島の住人を護り抜くよう託した。
「リザブーグの衛兵に何でも相談して、島のみんなのことは君が必ず護るんだ、いいか?」
「はい、きっと護ります!」
「頼んだぞ、わたしも帰ると約束する!」
この約束がなければ、ノイは敵と刺し違え、討ち死にするかもしれなかったのだ。
生命の絆が、彼を生かすこととなった。
リザブーグの槍兵ヘルドが小舟を手配した。
ミナリィ港まで同行してくれるという。
ノイとエナは、人生最大の願いを胸に湛え、断崖を下り、入江に至った。
そしてごく限られた人々の見送りを受けて船出した。
幼いマイヤが呼んだ。
「ぱー!!」
「行ってくるよマイヤ!
帰ったらうんと遊ぶからね。」
「行ってらっしゃいあなた、気を付けて!」
シェブロンが妻帯を奨めてくれなければ、彼を見送る家族など皆無だった。
ここへ帰って来よう、彼は再び“LIFE”に誓った。