第 12 章「八葉蓮華の妙法」
第 01 節「師敵対を弔(いぐる)む」
ファラが目を開けた時、そこはリザブーグ城ではなかった。
力を使い果たして眠ったまま、彼にしがみついているフィヲは、実に可愛らしい。
「・・・どこだ、ここは。」
思い出した。
ノースイーストタウン。
フィヲとメレナティレから帰還して、初めて二人で外出した場所だ。
「ファラくん・・・。」
こう呼んでぎゅっと掴んだが、フィヲはまだ眠っていた。
頬が濡れている。
本当はフィヲも疲れていて、たまにはファラとゆっくり休みたい。
そんな気持ちの表れだろうか。
昼前の街路は不思議なくらい人通りがなくて、優しい風が吹き抜けていった。
「フィヲ・・・、着いたよ、ありがとう。」
瑞々しい頬に、そっと口付けた瞬間、彼女は目を開いた。
「わあっ、おはよう。」
「あ、ごめん、つい・・・。」
「ううん、わたしこそ、ありがとう!」
涼しい日陰の街路に日が差し込み、往来の人の姿が見え始めた。
まるでフィヲが、しばし二人きりの時間を作るため、時を止めていたようにも感じられた。