第 11 章「究極の魔法」
第 07 節「ルング=ダ=エフサ」
夜半、月明かりと満天の星が失われ、轟々(ごうごう)と地鳴りのような音を響かせて、空を真っ黒に覆い尽くす現象が起きた。
村人が不安を訴えるので、ノイは身支度して表に出た。
厚い雲が立ち込める日よりも一層暗い。
よく見ると、星よりも小さく赤く光る無数の点滅が確認できた。
「竜族の、・・・群か!?」
松明でも使えば狙われる。
彼は村人を恐れさせぬよう、最小限の防衛態勢を敷くことにした。
ルング=ダ=エフサ守護のリザブーグ衛兵ヘルドとゴアも駆け付けた。
「ゼストが馬で村人に知らせています。」
「数が多いな。
襲撃に備えて、海へ降りる巌窟で凌ごう。」
人々はここの暮らしが長いため、寝入ってからは起きても夜目に慣れている。
なだめる兵士の声に従い、乾拭(からぶ)き屋根の家を後に、巌窟へ避難する。
ぞろぞろと列を成して移動する人々を、ノイと衛兵で守護する。
通りかかった少年ニルーが小声で問う。
「コーチ、戦うの?」
「来ればな。
安心して洞窟で家族を守るんだ。」
「うん・・・。」
剣士ルオも来た。
「ノイさん、おれも戦いたい。」
しばらく考えた後、ノイは答えた。
「洞窟の入口を頼む!」
「は、はい!」
ウェル爺が「気をつけてな」と言い、ノウ婆は「あんたも避難しなよ」と声をかけてくれた。
最後に少女エナと家族が通った。
「私の家、“LIFE”の魔法陣で護ってるの。
危ない時は入ってね。」
「そ、そうか、ありがとう。」
こうして竜の大群を迎え撃つ準備が整った。