第 11 章「究極の魔法」
第 07 節「ルング=ダ=エフサ」
早いもので、LIFEの護衛騎士ノイの娘は、歩き回り少々言葉を話すようになっていた。
彼に似て、意思の強そうな顔をしている。
最初、父を忘れていたが、すぐにそれと分かった。
「パー!」
「おう、よしよし。
マイヤ、いい子だね。」
「わー!」
彼が戻ってきてから、妻コザリアの病状が良くなった。
シェブロンが彼女にも“LIFE”の魔法陣を教えるよう、指南したからだ。
「先生はこんな私にも分かるように、素晴らしい魔法を授けてくださったわ!」
「マイヤにも、しっかり教えてあげよう。
きっと先生のお役に立てるよ。」
そう言うと彼女は、はじけるほどの微笑みを見せた。
帰ってきてよかった。
ノイは心からそう思い、師に感謝した。
島の子供たちがよく遊びに来る。
中でも少年剣士ルオは、ノイに手ほどきを受けたくて仕方がない。
「ノイ先生!
今日もひとつ、お願いします!!」
「おいおい、先生はやめなさい。
シェブロン先生のことを先生と呼ぶんだ。
わたしのことは『コーチ』とでも言いなさい。」
「わかりました、ノイコーチ!!」
彼はルング=ダ=エフサの少年たちが好きだった。
元々リザブーグの暴政に抗議して配流された人々の末裔だ。
天然の非魔法場でなければ、魔法使いの素養を持つ者もいるに違いない。
そのことはシェブロンが感じていて、著書を残していった。
学校にはラオンジーウやシェブロンの魔導書を学ぶ場ができていた。
ノイが持ち帰ったものもある。
少女エナは、ノウ婆に魔法文字を教わった。
「ねえ、島の外なら魔法が使える?」
「それは分からない。
けどシェブロン先生は、目に見える現象だけが魔法ではないとおっしゃった。
わたしもその通りだと思う。」
黒板に文字を書いて教え、ノートに書き写す。
「フィナモ、ズーダ。
ドゥレタ、ググ・・・。」
心地よい風が吹いてきて、カーテンを靡(なび)かせている。
「パティモヌ、ザイア。
クネネフ、テダン!」
バチン、と電気が起こった。
「あらっ、魔法!?」
「まさか。
でも確かに・・・。」
ノートに書いた文字が、スペクトルのように色付き、光っている。
「ルング=ダ=エフサの非魔法場、“LIFE”には無効みたい・・・!!」