第 11 章「究極の魔法」
第 06 節「ロマアヤ諸国連合」
ウズダク海軍の首都スタフィネルに帰還したキャプテン・レスタルダは、盟友でもあるアドミラル・ハムヒルドの左肩を抱えるように馬から降り立った。
「お頭ッ、ハムヒルド様・・・!!」
誰の目にも傷付き右手を失った元キャプテンの姿が痛ましく映った。
「お前ら、誇りに思え!
『究極の魔法』を持って帰ったぞ!!」
「きゅう、・・・何だって!?」
「キャプテンが魔法とは、どうかしちまったんじゃ・・・。」
「おれたちゃあ海の男でさあ!
・・・魔法なんてなぁ。」
「船を揚げたら邸(やしき)に集まって来い!!」
「わかりやした!」
大セト覇国の平定後、スタフィネルは各国の旅行者で賑わうようになっていた。
「街中(まちなか)は、ありゃあワイエンの者じゃねえな、気品のある連中が増えたもんよ。」
「まずは正式に、アドミラルに就いていただきますよ。
宴(うたげ)が楽しみだ!」
続々と集ってくる若い衆、親分たちも陽気だった。
本国にはイデーリアとリザブーグでの戦勝が報じられていたからだ。
「揃ったか!
じゃあよく聞け。
俺はリザブーグで素晴らしいかたの門弟に加わった。
シェブロン先生というかただ!」
一瞬、沈黙する。
「聞いたことねえなあ、・・・そりゃあ、どういうかたなんで?」
「人間、誰にでも世界で最強の力があるとおっしゃる。
それを“LIFE”というんだ。」
「ら、らいふ・・・。」
「そうだ!
お前たち、悪魔の群を見ただろう。
あれを根こそぎやっつける、すごい力だ!」
「なんだって!?
あんな化け物を・・・?」
「昔は海賊どうしで争ったもんだが、ロマアヤもセトもワイエンも、共通の敵がある。
それが空の悪魔どもなんだ。」
「あれと戦うのか!?
皆殺しにされちまうぞ!」
「“LIFE”がなければそうだろう。
だが言った通り、世界で最強の力だ!
試しに片腕になったこの俺が手本を見せてやろう。」
レスタルダが間に入って制止した。
「お頭には提督の座に就いていただくことにした。
アドミラル・ハムヒルドだ、異存はないな!」
「おう!
ウズダク海軍の提督、ハムヒルド様!!」
少々照れながら、ハムヒルドが指命した。
「キャプテンは俺の右腕同然のレスタルダだ!
ウズダクだけでなく、ワイエン、ひいては世界のために戦ってきた男だ。
どこまでもついていけ、いいな!!」
「おおー!!」
こうして代替わりは成り、レスタルダに「キャプテンの宝刀」が譲り与えられた。
「ヒムホーンの丘に必殺の陣を敷く!
親方はこっちに集まってくれ!!」
レスタルダは親方たちに“LIFE”の魔法陣を教え、ハムヒルドと打ち合って七色の光を見せた。
「す、すげえ!
これが“LIFE”、『究極の魔法』か・・・!!」
若い衆がはしゃぐ声を圧倒するほどの、親方衆のどよめきが屋敷を揺るがした。