第 11 章「究極の魔法」
第 05 節「レボーヌ=ソォラ」
拠点間の作戦が決まった。
全ての頭部をほぼ同時に倒し、アミュ=ロヴァ市民総勢による一斉射撃で本体を消し去るのだ。
ピスム、ワダイルが旧ザベラムの通信拠点に構える。
要領を得たワーツとテヴァーンは敵の南西に回り込んだ。
ノッグルとリブンはモアブルグを死守する。
隊長のゴーツが司令塔である。
アミュ=ロヴァを本陣衛の残留部隊に託し、ヤエとベーミラは接近戦を挑む。
テビマワ派遣の本陣衛は、生き残った家畜をすでに避難させ、魔法による遠隔部隊と物理戦部隊を敷いた。
実に大蛇の頭部は六つあった。
「多頭竜ヘキサヒュドロスよ!
全てを喰い尽くせ、世界を飲み込め・・・!!」
こう言って火を焚き、呪術を唱えるのは呪師フラハだ。
降下するだけの翼を与えられた雌牛、雌羊、雌山羊、猪などが、空を黒く覆うほど放たれている。
渦巻く暗雲の上に「天宮魔神殿」があるのだろうか。
傍観するように悪魔の大群が舞い飛ぶ。
そして決行の時刻を迎えた。
ワーツがバズーカを撃つ、更に撃つ。
頭部を一つ落とす。
首まで消し去る。
奇術師ヨンドは逆上して拠点を襲う。
テヴァーンが忍術で絡め取る。
北東からピスムがクロスボウで射ると、七色の衝撃は大蛇の頭部を浮かす、ワダイルの爆薬で吹き飛ぶ。
テビマワから特大の魔法弾が北側の頭部を砕く。
そこへ巨人となった怪人ラモーが踊りかかると、五十人からの本陣衛が攻め返す、転倒させる、“LIFE”を現じる。
地響きのような叫び声が空気を震撼させ、遠くアミュ=ロヴァまで鳴り渡った。
モアブルグに悪魔たちが降下する。
ノッグルが投擲(とうてき)で撃ち落とす、リブンが斬る、ゴーツが薙ぎ倒す。
ベーミラがヘビの背を駆け上がる、舞うように飛んで叩き斬る。
右からの一太刀で弾き飛ばす、左からの襷(たすき)斬りで破裂させる。
別行動のヤエも斬り掛かる。
剣が“LIFE”を帯びている。
天まで届く長い光の刀身はヘクサヒュドロスの六つに分岐した胴体を両断した。
二体に分離した多頭竜は、失った頭部の修復を試みてのたうち回っている。
全方位から追撃が起こった。
術士は次々に捕縄される。
腹だけになった大ヘビは、同化して一体の黒いナメクジのようになりかけた。
この時、西のアミュ=ロヴァから大挙した“LIFE”の光が、円錐状に拡がってヘクサヒュドロスの残骸を丸ごと飲み込んだ。
広範囲に渡って浮遊する悪魔たちまで飲み込まれ、忽(たちま)ちに消え失せてしまった。
「やったー、“LIFE”の勝利だー!!」
「わたしたちは街を守ったんだわ!」
「うん、アミュ=ロヴァ全体を!」
「レボーヌ=ソォラを!!」
「こうやって世界まで変えていくんだ!!」
古都は目覚めた民衆の歓呼に沸き返り、本陣衛の雄叫びが轟いた。
こうした人間の声の力は悪魔たちを退散させる。
巻き込まれず反撃を躊躇(ちゅうちょ)していた魔の一族は、四散して各々に逃げ惑い、互いにぶつかり合い、雪崩(なだ)れ落ちるように一層減じていった。