第 11 章「究極の魔法」
第 04 節「ポートルモア」
港町フスカから、航路で久方ぶりに帰郷したアンバスは、懐かしい街の空気を大きく吸い込んだ。
旅仲間のサザナイアとは別行動になったが、ルアーズの拳法とアンバスの魔法はよく連携し、機体の残党にも海上での襲撃にも破れることはなかった。
ここはミルゼオ国の飛び地になっていて、レボーヌ=ソォラの統治ではない。
ルモアへ赴くように言ったのは、タフツァだった。
“LIFE”を習う者は、まず父母を助けるべきとの思想が背景にある。
ルアーズは、今や世界最強の部隊となったLIFE騎士団の発足にも大いに尽力した。
リザブーグ城下の家族は安泰だ。
今度はアンバスが父母の危機を助ける番なのである。
市街から郊外へ帰省すると、懐かしい我が家が目に映った。
少し古びた感がある。
玄関の呼び鈴を、闘神ヱイユが鳴らした時から、彼の“LIFE”を探究する旅が始まったのだ。
妹が、以前より大人びた様子で出迎えた。
「あっ、お兄ちゃん!
お帰りッ!!」
奥から出てきた母は白髪が目立つようになっていた。
笑顔皺(じわ)をよせて言った。
「アンバス、心待ちにしていましたよ。」
近頃、足が弱くなったという父は、椅子に座って待っていた。
「逞しくなったな。
どうだった、ロマアヤは・・・?」
「父さん、心配かけて悪かった。
イデーリアは、公国に統一されたよ。
ロマアヤの勝ちだ。」
「そうか、よくやった!」
微笑みながら涙を流す父の顔が心に焼き付いた。
最愛の一人息子が戦地に赴くとあって、両親は無事を祈らぬ日などなかったのである。