第 11 章「究極の魔法」
第 02 節「フォレストリザブルグ」
リザブーグ城の北東部、木々がなぎ倒された一帯に、巨大な竜巻と、周囲を回遊するように舞い羽ばたく黒龍の群があった。
最初、千手の鬼神テンギを捕らえるためにヱイユが起こしたものだったが、一匹二匹と飛来する竜族、有翼獣は次第に彼の手に余るようになっていった。
やがて悪魔が群がり始めると、様相は猛々しさを増した。
もはやヱイユの手を離れ、制御不能な現象となってしまったのだ。
ハイパー化したカラスが何羽も群がってきて、ヱイユを足止めした。
そして暴風域が近付くと、後方退避を余儀なくされるのである。
『数がケタ違いだ。
金翅鳥(こんじちょう)の限界まで捕食させるしかない・・・!!』
電光と雷鳴を伴って、竜巻よりも大きな黒い影が世界を覆うと、竜族が束になっても敵わない巨鳥が姿を現した。
彼は自身を中心として、八方へ“LIFE”の魔法陣を張り巡らした。
忽(たちま)ちに黒い巨鳥の全身は金色の光を帯びて、竜の群とは反対の向きに飛翔し旋回を始めた。
プランクトンを捕食するクジラのように、倒す必要も捕らえる必要もない、絶対弱者の相手を大きな口で飲み込む。
慌てて逃げ出す群を、今度は追い回す、引き寄せる。
“LIFE”の魔法陣によって、金翅鳥とぶつかった悪魔の類は消え去った。
旋回するものがなくなると、風は弱まり、吹き上げられたテンギが放り出される。
北東の方角だ。
即座にヱイユが追撃する。
アーダを喚んで、背上に収容を試みた。
と、その時である。
セイレーンの歌声だろうか、美しくも悲しげな、物憂げな音声(おんじょう)が、小さく、次第に大きく、耳に頭に響き始めた。
上空からは赤紫色の雲を巻き起こして、この世のものとは思えない白色の獣が紫色の翼をはためかせながら、テンギに近付いてきた。
ヱイユとアーダも周囲にいたのだ。
『モウ終ワリダヨ、ボウヤ・・・♪♪』
なんと大きな声か。
放射状に衝撃波が起こって、津波のように万物を押し流す。
ヱイユはアーダにしがみつき、アンチ・トゥウィフのロニネで防いだのみで、訳も分からず吹き荒らされ、乱れ飛んで行った。