第 11 章「究極の魔法」
第 01 節「オルブーム」
ワリヒ、タウサー、アゴー、ランラの四部族から成る戦士たちを味方につけたファラの一行は、長老の森以北に広がる雪原を越え、ついに「闡提嶼(せんだいしょ)」と呼ばれる忌まわしき島々を見た。
ドーム状に張られたバリア。
その内部に営まれる都市。
空を、海を、舞い遊ぶ太古の危険生物。
なぜ北のほうが暗闇に包まれているのだろう。
彼らが願った“LIFE”とは正反対の、逆方向魔法陣が渦巻いている。
カオスの宇宙を見上げ、フィヲがつぶやいた。
「世界をこんなにするなんて、許せない。」
部族の戦士たちは絶望に駆られ、涙を流す者もいた。
ファラが叫ぶ。
「だからぼくたちが行くんだ!
この深い深い闇を払い退けるために、ぼくたちは力をつけてきた!!」
ザンダが呼応する。
「おれはあの中にいなかったことを感謝する!
あの暗闇の中に、“LIFE”の灯をともすことが先生の恩返しになる!!」
皆の心を鼓舞するように、力強く、雄々しくドガァが咆哮した。
サザナイアが戦士たちに呼び掛けた。
「何が起こっても“LIFE”の力で戦おう!!」
女たちが『そうだ!』と声を上げる。
男たちも『戦うぞ!』と続く。
黒い雪が降り始めた。
フィヲが皆を護る。
「活動全域でわたしが雪を浄化します。
安心して戦って!」
空からまるでパラシュートのように降下してくるのは、有翼の黒騎士たちだ。
「来たな!」
「剣士は私に任せて!!」
サザナイアが燃えるような瞳を輝かせ、降り立つ最初の一人目掛けて一直線に駆けた。
邪悪な武器が砕け散る。
瞬時に鎧は木っ端微塵だ。
二人目が海まで突き飛ばされる。
三人目、回転するほどの強斬に倒れる。
五人、十人と、降り立つ者は横凪ぎに払われて立ち上がれなくなった。
二十人、三十人と倒れ、折り重なった。
各部族の戦士たちがサザナイアに加勢する。
「術士だ!
おれが引き受ける!!」
女の精霊師ベナイザが、四属性のエレメンタルを伴って浮遊していた。
ザンダがドガァの頭に乗り、ドガァが力いっぱい放り上げた。
ジャンプに見せかけて、ザンダが飛翔を起こす。
「ロマアヤ公国、魔導騎士ザンダがお前を倒す!」
ベナイザの赤紫色をした唇が、頬まで裂けるようにわらった。
「ガキか。
拙いなぁ、絞め殺してやるよ。」