The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 65 話
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朝食後、ソマと子供たちは、実戦になぞらえた試合を行うため、森へ向かった。

ルールは「まいった」と言うか、息が上がって動けなくなるまでだ。

「お姉ちゃん、頑張ってー!!」
「ルクト兄、負けるなー!!」

双方、お辞儀をしたら即開戦である。

ソマが“LIFE”の魔法陣を杖にかけた。

「きれいー、見たことない・・・!!」

ルクトも一瞬、放心した。

そこをひと凪ぎ、ソマが払った。

打撃というよりも、バリアに当たって弾き飛ばされるような体感だ。

木剣で受け止める、あまりの威力に防御で精一杯になる。

「ホントに杖か・・・!?」

足元へ振り抜く。
ルクトの足が地面を離れる。

「うわッ!」

飛ばされて木に当たりそうな所を、ソマが保護する。

「術士は何をするか分からないでしょう?」

しかしルクトは怯まない。
地に着くと、反撃を試みた。

走る、落ち葉を使って滑る、急転回する。

飽くまで一太刀入れるつもりだ。

ソマはやや背後に回られて振り返ろうとした。

そこに剣先が飛んだ。
正面から振りかぶってくる。

「おおおーーーッ!」

普通のロニネなら破ってしまいそうなほど、鋭い太刀筋である。

杖に魔法はかけてもバリアは張っていない。
ハンデではないが、公平に打ち合うためだ。

杖で受ける。
打撃が跳ね返る。

少年が跳び退く。

更に一太刀、横凪ぎのスラッシュを繰り出す。

杖を立てて防ぐしかない。

そこから連続の斬撃を打ち込まれ、今度は守り一辺倒になる。

『これは強い、剣も、意思の力も・・・!!』

跳ね返される分、大きく振り返すようになる。
逆に威力が増した。

ソマも打たれるままでは稽古にならない。
杖で全てを受けず、魔法で剣撃を弾くようにした。

「おっ、と!」

剣が飛ばされかけて強く握る。
両手を上げた体勢になる。

隙はここだけだった。

手元を狙って杖を振り翳(かざ)す。

木剣は打ち飛ばされた。

だが少年はあきらめない。

飛んだ剣を拾おうと走った。

さすがにソマは様子を見た。
拾って、再び仕掛けるだろうか。

カランッ、と剣が転がる。
追いかけて拾い上げる。

標的との距離を掴んだ。
地面を蹴った。

爪先だけで地面を駆り、一直線にソマを狙う。
彼が発揮し得る最高速で迫った。

野生の獣のような機敏さに、一瞬反応が遅れる。
片手に構えた杖を打たれる。

ソマがノックバックされた。
道を求める純粋なルクトの一念が、“LIFE”そのものとなって発現したのだ。

「すごい!
まいった。」

降参である。

飛び上がって喜ぶルクトを、ソマは抱きしめたい気持ちになった。
イズが駆け寄る。

メユウとリーシャが驚いて顔を見合わせている。

ソマが拍手を送ると、子供たちは、ルクトも、一緒になって讃え合った。

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