第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
朝食後、ソマと子供たちは、実戦になぞらえた試合を行うため、森へ向かった。
ルールは「まいった」と言うか、息が上がって動けなくなるまでだ。
「お姉ちゃん、頑張ってー!!」
「ルクト兄、負けるなー!!」
双方、お辞儀をしたら即開戦である。
ソマが“LIFE”の魔法陣を杖にかけた。
「きれいー、見たことない・・・!!」
ルクトも一瞬、放心した。
そこをひと凪ぎ、ソマが払った。
打撃というよりも、バリアに当たって弾き飛ばされるような体感だ。
木剣で受け止める、あまりの威力に防御で精一杯になる。
「ホントに杖か・・・!?」
足元へ振り抜く。
ルクトの足が地面を離れる。
「うわッ!」
飛ばされて木に当たりそうな所を、ソマが保護する。
「術士は何をするか分からないでしょう?」
しかしルクトは怯まない。
地に着くと、反撃を試みた。
走る、落ち葉を使って滑る、急転回する。
飽くまで一太刀入れるつもりだ。
ソマはやや背後に回られて振り返ろうとした。
そこに剣先が飛んだ。
正面から振りかぶってくる。
「おおおーーーッ!」
普通のロニネなら破ってしまいそうなほど、鋭い太刀筋である。
杖に魔法はかけてもバリアは張っていない。
ハンデではないが、公平に打ち合うためだ。
杖で受ける。
打撃が跳ね返る。
少年が跳び退く。
更に一太刀、横凪ぎのスラッシュを繰り出す。
杖を立てて防ぐしかない。
そこから連続の斬撃を打ち込まれ、今度は守り一辺倒になる。
『これは強い、剣も、意思の力も・・・!!』
跳ね返される分、大きく振り返すようになる。
逆に威力が増した。
ソマも打たれるままでは稽古にならない。
杖で全てを受けず、魔法で剣撃を弾くようにした。
「おっ、と!」
剣が飛ばされかけて強く握る。
両手を上げた体勢になる。
隙はここだけだった。
手元を狙って杖を振り翳(かざ)す。
木剣は打ち飛ばされた。
だが少年はあきらめない。
飛んだ剣を拾おうと走った。
さすがにソマは様子を見た。
拾って、再び仕掛けるだろうか。
カランッ、と剣が転がる。
追いかけて拾い上げる。
標的との距離を掴んだ。
地面を蹴った。
爪先だけで地面を駆り、一直線にソマを狙う。
彼が発揮し得る最高速で迫った。
野生の獣のような機敏さに、一瞬反応が遅れる。
片手に構えた杖を打たれる。
ソマがノックバックされた。
道を求める純粋なルクトの一念が、“LIFE”そのものとなって発現したのだ。
「すごい!
まいった。」
降参である。
飛び上がって喜ぶルクトを、ソマは抱きしめたい気持ちになった。
イズが駆け寄る。
メユウとリーシャが驚いて顔を見合わせている。
ソマが拍手を送ると、子供たちは、ルクトも、一緒になって讃え合った。