The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 63 話
前へ 戻る 次へ

ルクトは心優しい少年だが、剣の志を置いて少女の誘いに乗ることはしなかった。

本当に決めた時間まで森で稽古に励んだのである。

村に戻ると、イズとメユウ、もう一人の少女と、そこにソマもいた。

子供好きなソマは子供たちを飽きさせもせず遊ばせている。

「あ、ルクト兄!」

メユウもこう呼んだ。

顔を赤らめて、それでも表情は緩めない、少年のひたむきさが見てとれる。

ソマはこういう少年が好きなのだ。

「あら、おかえりなさい。
剣が使えるのね。」

ルクトは下を向いてしまった。

手を取るソマを、俯(うつむ)き加減に見た。

自分の全てを包み込むように、優しく微笑んでいる。

真面目な彼は、師の言い付けを思い出した。

「旅の、ひと・・・?」
「うん、私はソマ。」

頭がぽーっとした。
首を振りながら、やっとのことで声にする。

「おれの、剣の稽古を・・・。」
「私が剣の!?
じゃあ、魔法使いとして相手してもいいかしら・・・?」

スヰフォスから剣と剣の試合を言い付けられているわけではない。

彼自身のために稽古をつけてもらうよう、道を示してくれたのだ。

「強くなりたい。
・・・お願いしますッ!」

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.