The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 62 話
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ビオム村に住む十四歳の少年ルクトは、学校以外の時、早朝から暗くなるまで剣の稽古に余念がなかった。

師スヰフォスから二週に一回ほど手紙が届く。

「剣士として、君は村で年長になった。
子供たちの相手をしてくれているのは大いに助かっている。
君自身のために、稽古をつけてくれる人があると尚(なお)良い。
見つけたならば試合を頼むようにしなさい。」

ひたむきな彼は、短くても必ず返信した。

「スヰフォス先生、分かりました。
旅の人が来られた時には稽古をつけていただこうと思います。」

少年イズが来た。

「なあルクト兄!
おれにも稽古してくれよ!!」
「ああ。
そこの木剣を持ってみろ。」
「よし!」

ルクトはまず相手の剣を受けてやる。
二、三の剣を受けた後、剣とはこういうものだと太刀を与える。

その時に手加減をすると、後輩たちがそういうものかと剣を侮(あなど)ってしまう。

だから手を抜かないのだ。

シェブロンに師事してから、スヰフォスの教えが変わってきた。

『ルクトよ。
君は凶悪な敵を前にして、その武器を砕き、牙を挫(くじ)いて戦意を無くさせることはできるか?
私が戦列を共にする騎士たちは見事にやってのける。
これを“LIFE”戦術と言う。』

「らいふ、戦術・・・。」

イズが打ってきた。

「おーーーりゃーーーあ!!!」

隙が見えた。
手の甲である。

カツンッ!

イズの剣が手を離れ、打とうとした力と同じ力で、反対側へ飛ばされていった。

「あー!」

まだ十代半ばとはいえ、剣という道に生きるものとして、真剣勝負こそが生きる道だと考えている。

後輩の剣を打ち飛ばしただけでなく、次の一手を振り、寸での所で命がないと教えるのだ。

無刃であれ、ルクトの刀身がイズの首に迫り、喉元でピタッと止まった。

「まいった!」
「今日はここまで。」

座り込むイズに一瞥をして、ルクトはまだ森へ入ろうとする。

「兄(にい)!
メユウが呼んでたぞッ!」

ルクトは顔を赤らめ、「稽古の後だ」と言った。

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