第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
ビオム村に住む十四歳の少年ルクトは、学校以外の時、早朝から暗くなるまで剣の稽古に余念がなかった。
師スヰフォスから二週に一回ほど手紙が届く。
「剣士として、君は村で年長になった。
子供たちの相手をしてくれているのは大いに助かっている。
君自身のために、稽古をつけてくれる人があると尚(なお)良い。
見つけたならば試合を頼むようにしなさい。」
ひたむきな彼は、短くても必ず返信した。
「スヰフォス先生、分かりました。
旅の人が来られた時には稽古をつけていただこうと思います。」
少年イズが来た。
「なあルクト兄!
おれにも稽古してくれよ!!」
「ああ。
そこの木剣を持ってみろ。」
「よし!」
ルクトはまず相手の剣を受けてやる。
二、三の剣を受けた後、剣とはこういうものだと太刀を与える。
その時に手加減をすると、後輩たちがそういうものかと剣を侮(あなど)ってしまう。
だから手を抜かないのだ。
シェブロンに師事してから、スヰフォスの教えが変わってきた。
『ルクトよ。
君は凶悪な敵を前にして、その武器を砕き、牙を挫(くじ)いて戦意を無くさせることはできるか?
私が戦列を共にする騎士たちは見事にやってのける。
これを“LIFE”戦術と言う。』
「らいふ、戦術・・・。」
イズが打ってきた。
「おーーーりゃーーーあ!!!」
隙が見えた。
手の甲である。
カツンッ!
イズの剣が手を離れ、打とうとした力と同じ力で、反対側へ飛ばされていった。
「あー!」
まだ十代半ばとはいえ、剣という道に生きるものとして、真剣勝負こそが生きる道だと考えている。
後輩の剣を打ち飛ばしただけでなく、次の一手を振り、寸での所で命がないと教えるのだ。
無刃であれ、ルクトの刀身がイズの首に迫り、喉元でピタッと止まった。
「まいった!」
「今日はここまで。」
座り込むイズに一瞥をして、ルクトはまだ森へ入ろうとする。
「兄(にい)!
メユウが呼んでたぞッ!」
ルクトは顔を赤らめ、「稽古の後だ」と言った。