The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 61 話
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「ファラさん、もう一人、術士がいます・・・!!」

サザナイアが叫ぶと、ダッツ、ポートルが加勢に戻ってきた。

雪のように白い肌と緑の瞳を持つランラ族の特徴を有した、ムッキアと呼ばれる術士だ。

彼はこの日、ヅモノと同行していた。
黒ローブの下にヒツジの頭蓋骨をかぶっている。

動物の骨を研いで作った長い槍で、カエルやトカゲ、コウモリが貫かれていた。

「ヒィィ、気持ち悪い・・・。」

思わずバミーナが顔を背ける。

手のひと振りで、何かの液体をバラ撒いてきた。
フィヲがロニネを張って味方を護る。

地面に落ちた液体は、黒煙を上げて落ち葉を焼いた。

『酸か、毒か・・・。
こんな危険な人間が野放しで徘徊しているとは。』

ファラが出方に迷う。
ザンダが言った。

「捕まえていいだろう、悪さができないように。」

サザナイアも頷く。

何をしてくるか分からない敵に、好き勝手を許してはいけない。

魔法発動用のプレートを振り翳して、ザンダがムッキアに「ショック」を与えた。
立て続けに巨獣化したヅモノにも放つ。

断動したムッキアを、攻撃型ロニネのバインドで捕縄した。

ヅモノはいきり立って地踏(じぶ)みし、大きな蹄(ひづめ)で反撃に出る。

重量がかなりある。
地面がズシン、ズシンと揺れた。

ドガァよりも大きい。
しかし獅子は畏れない。

鋭い爪を雄羊の左肩に突き刺す。

血が流れ出る。
首に咬み付く。

絶叫が響く。

肉食獣に情けも容赦もない。
ただ食肉あるのみだ。

左腕で巨大な曲角(まがづの)を押さえる。
更に深く喰らい付く。

右腕で相手の左脇腹を捉える。
横倒しに押し倒す。

喉笛に喰らい付く。
蹄を押さえ込む。

左腕の付け根に咬み付く。
馬乗りになって頭部を殴る、爪で引っ掻く。

四肢を痙攣させ、雄羊は意識を失った。

「ドガァ!
よくやった。
そこまででいい。
そいつの肉は美味くないだろう。
ご褒美はちゃんとやるからな。」

雄々しいライオンは誇りも高く、敵に完敗を喫させ、その憐れなヒツジの上から降りた。

そして咆哮が轟くと、ザンダは耳を押さえ、ムッキアは縮み上がって昏倒し、ファラたちは腹の底から笑った。

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