第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
血にまみれたテンギが柩を破壊して暴れ出た。
LIFE騎士たちが参戦の隊列を取ったため、ヱイユは妖刀ヤマラージを槍状に長大化させ、力で押してテンギを後退(あとずさ)らせていく。
「みんな、元の配置についてくれッ!!」
飽くまで一人で戦うつもりだ。
十本の腕を守りに回させるほどに猛攻した。
七色に輝く“LIFE”の攻撃型ロニネを纏(まと)って、打ちに打つ、押しに押す。
木に激突すると、テンギにはダメージとなり、ヱイユにはノーダメージとなった。
思うに任せぬ悔しさに、魔法を暴発させてきた。
炎が飛び出す、バリアで吸収される。
風波が起きる、一気に四散する。
電撃が迸る、軌道が歪んで自らに当たる。
「どうした、不発ばかりじゃないか。」
ヱイユの突震で足元を掬う(すく)。
浮いた所を更に突き飛ばす、打ちまくる。
やっとのことで片足立ったテンギに、急旋回を起こしてバランスを奪う。
上空へ吹き上げていく。
アーダと共に、横殴りの連続攻撃を叩き込む。
雷電が一つ、二つ、三つ。
テンギの肢体を撃ち貫(ぬ)く、劈(つんざ)く、焼き焦がす。
このまま竜巻に吹かせて遠くへ飛ばすか。
今日の作戦のため、リザブーグから北東の森林エリアは立ち入りが制限されているようだ。
居住区を巻き込まぬよう、一定範囲内に竜巻を旋回させて吹き荒らす。
天へと立ち上る黒煙にも似たトルネードは、木々を巻き上げながら、円を描くように移動している。
ここでヱイユは、竜巻が描く円軌道に“LIFE”の魔法陣を立ち上げた。
黒かった旋風は忽(たちま)ち七色の光を帯び、テンギを絶叫させた。
「これならどんなに苦しくてもお前自身の業苦以外の何物でもない。
命が尽きるか、お前の悪業が尽きるか、どちらかだ。」
風の現象だけであれば、テンギの魔暴力によって操(あやつ)り返される恐れもあった。
しかし“LIFE”を操ることなど、ただの術士には到底叶わぬことだ。
この一点において、ヨムニフはシェブロンに完敗するのである。