第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
「なあソマ。
シェブロン先生に呼ばれた。
タフツァの所に行ってくる。」
そう言って満面に笑みを浮べたヱイユを見て、ソマは心から「よかった」と思った。
彼の孤独を救うのに、彼女だけでは足りないと感じていたからだ。
「気をつけて、タフツァをお願いね!」
二人は口づけした。
木々が色付く季節を迎えていた。
風が舞うように木の葉を飛ばしている。
飛び立つヱイユを見送ると、村の少女がはにかんでソマを見ていた。
水汲みの帰りのようだ。
「・・・おねえちゃん。」
不思議な出会いだった。
幼い頃の彼女自身と似ている。
「はじめまして、私はソマよ。
おうちは近いの?」
「うん、あっち。
わたしメユウ。」
ビオム村の軒並みが見える。
そうだ、ここの子供たちに魔法を教えるのはどうか。
バケツを持ってあげようとしたが、少女はいいと言う。
「学校に行っているの?」
「そう、二年生。」
少数民族の女性パ=ムヴィア=ナと過ごした日々を思い出す。
彼女は当時のパナの年齢に近付いていた。
「ねえ、男の人、名前は・・・?」
「あはっ、彼はヱイユ。」
「え、いゆ。
おねえちゃん、よかったね、ふふ。」
少女の手の温もりがパナを思い出させる。
彼女が導いてくれているように・・・。
「ほら、いい景色でしょ。」
ビオムの全景が広がった。
なんと温かな村だろう。
「おねえちゃん、村に来て。」
駆けて行く少女と共に、ソマは村人たちに迎え入れられていた。