The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 47 話
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灰竜アーダは肉を与えられ上機嫌だった。
騎士長ムゾードフのキャンプで歓待を受けているのである。

ヱイユからの手紙を受け取った、白髪混じりの長は、すぐリザブーグ城の警備長ワヌアスに通信した。

『ソマ殿がヱイユ殿を見つけられ、合流。
ミルゼオ国ビオム村付近に逗留とのこと。
サウォーヌの皆さんは予定通りレボーヌ=ソォラへ。』
『わかった、博士と学師様にお伝えする。
・・・おお、先生、コダーヴ市のムゾードフからでございます。』

シェブロンが応じた。

『騎士長、要衝の守護に感謝します。
ソマからはどうやって・・・?』
『お手紙を、灰色のドラゴンが首から提げて運んでくれました。』
『それではすみませんが、通信機を竜の耳元に寄せていただけませんか。』
『はい、お待ちください。』

アーダの元気な鳴き声が聞こえる。

『ヱイユ君、聞こえるか、シェブロンだ。』

再びアーダが鳴く。

『ビオムに騎士団の部隊を送る。
ソマに預けて、タフツァ君を助けてもらいたい。
リザブーグ城から東北東の通信拠点にいる。
もし聞こえていたら、先にアーダを送ってほしい。』

その時、ビオム近郊の小屋で休養していたヱイユの意識の中に、アーダを通じてシェブロンの声が聞こえてきた。

「せ、先生・・・!!」

彼は言われた通りアーダに指令を出した。
灰竜はムゾードフに顔を刷り寄せて礼を言い、南南西の方角へ飛び立って行った。

『ひ、人の言葉が分かるのですか・・・!?』
『ヱイユに通じたようですね。
これで大丈夫。』

シェブロンとしても、自らヱイユに言葉をかけられる機会はごく少ない。
戦いに明け暮れて心身とも傷付いていることを知っていた。
そういう時はソマと二人で過ごすよりも、ひたむきに戦っている仲間と会わせたほうがよい。

悪魔に誘い込まれた幻惑から、生(せい)のある世界に呼び戻してやらねばならないからだ。

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