第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
地上から姿を消した無数の悪魔たち、竜族は、一体どこに行ったのか。
ヤコハ=ディ=サホの北、長老の木が聳える森の彼方は、北極圏へと通じる海だ。
そこには小さな島が散在する。
母なるアズライマの生命力が涌現する豊かな森が、悪魔たちの手で枯れ始めると、人間社会から追放された闇の者共は、黒いローブに身を包み、この島々へ集まって来ていた。
ファラが魔族を追って北上する間、彼らも北上を続けていたことになる。
狙いは長老の木ではなく、“LIFE”のエネルギーを弱めて島を手中に収めることだった。
小さな島に六芒星の逆方向魔法陣を張り、暗黒のロニネですっかり覆い尽くす。
これで外界を遮断できる。
そして長老の森からエネルギーを奪い続ける。
中でも古来、最も凶事を重ねてきた「闡提嶼(せんだいしょ)」と呼ばれる小島を悪魔の根城とした。
はじめは暗黒ロニネで覆っただけのドームであった。
だが彼らは地下資源を掘り下げ、伽藍を築き、地層には市街を、上層には宮殿を建設するに至っていた。
この城塞は「天宮魔神殿」と呼ばれ、海を離れて上空まで浮遊する力を備えている。
海上に現れるのは森からのエネルギー供給のためだ。
いずれは上天に在っても動力源を得られるようになるだろう。
こうして、グルゴス一世が君臨し、ヨムニフが操る、世界と“LIFE”を滅亡に陥れる、最悪の魔帝国は築き上げられた。