第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
馬車の中、毛布をかけての車中泊となった。
ノスタムを合わせて六人であり、全員収容できる。
だがヱイユは人の温もりに慣れていない。
遠慮してか、いつものように樹上にいた。
彗星の尾はもう見えなくなっている。
それにしても不思議な夜だ。
灰竜アーダの温もりで眠ろうとする。
ヒユルの死骸を取り込んだ悪魔ミュネフィ=リッドワッドが、次はいつ現れるか。
ソマを護れるだろうか。
否、自身も彼女も、また誰人であっても、襲いかかる悪魔とは雄々しく対峙し、戦い、打ち破るべきである。
「ヱイユくんの席、あるわよ。
中で休んだら?」
「野生の生き物は皆、迫り来る危険を自分で察知して生き抜いているだろう。
俺もそうやって生きてきたのさ。」
ソマが木を登ってきた。
手を掴む。
引っ張り上げる。
抱き止める。
二人はすでに愛し合っていた。
「俺が馬車に慣れないように、お前も夜風に慣れないだろう。」
「・・・うん。
けど、やっと会えたんだから。」
体が、心が、生き生きと高ぶる。
疲れ果てていたことが嘘のようだ。
二人は腕に抱(いだ)き合う悦(よろこ)びに、全細胞が若返り、生命が蘇生するのを覚えた。
アーダが翼を広げて、二人を包んでくれる。
温かい、これなら眠れそうだ・・・。