第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
「ねえ、ヤエさん。
タフツァのこと、好き?」
「えええっ!?
・・・そんな、分からないわ・・・。」
赤面性の彼女は手の平で顔を覆っている。
ソマは彗星が横切っていく夜空に甲高い笑い声を響かせた。
「ここから花火を打ち上げたら、ヱイユくんに届く気がするんだ。
・・・やってみるね。」
ヒューーーン、・・・ドーーーーーン・・・!!
二発、三発、・・・まだ前の火花が残っているうちに、次々と打ち上げた。
「綺麗、戦いのためではない魔法が、現象が、こんなに美しいなんて・・・。」
ヤエは花火を見ていたが、ソマは“LIFE”の祈りを、一弾一弾に込めていた。
ついに七つの震天に祈りの火が灯ると、ソマは叫んだ。
「ヱイユくーーーーーん!」
声が海峡に響いてこだまする。
すると、対岸の辺りから、同様の花火が上がった。
七つの花火は炎の赤だけでなく、橙、黄、緑、水色、青、紫のスペクトルを現じていた。
『ソマ、ありがとう。』
頭の中で響いたのか、海峡の向こうから聞こえたか、ヱイユの声がした。
「あっ、あなたは・・・!?」
ソマの後ろ、ヤエの眼前に、衣服も破れ傷ついた、闘神ヱイユが微笑んでいた。