The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 35 話
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夜、馬車の照明では道が暗すぎる。
たとえ魔法で火を起こしても、日中の照度を得ることは難しい。

メレナティレ式の馬車は電球を備えていたが、今日はキャンプする他なかった。

ビオム村まで半日ほどかかるだろう。

ソマはヤエを連れて、西の海が見える断崖に立った。

「オルブームが見える。
ファラ君たち、苦戦していないかしら・・・。」
「・・・リザブーグ城でフィヲさんから魔法陣のお話があった時、私は円卓の間にいるのも忘れて、どこか遠い過去、皆さんと同じ場所で、同じ“LIFE”の教えを聞いていたような感覚でした。
お二人がいる限り、魔族といえども“LIFE”を破ることはできない。
そう思っています。」

ひんやりと夜風が肌寒い。
季節は冬へと向かっていた。

「私、パナさんに魔法を教えてもらったの。
ファラ君のお母さん。
男の子だけれど、パナさんと話し方が似ている。
魔法の起こし方も。
それにツィクターさん。
ヨムニフに痛め付けられながら・・・、当時の私たちLIFEを護ってくれた。
本当にボロボロになって護ってくれたの。
私は必死に回復魔法を使い続けた・・・。」

幼いヱイユはヨムニフの挑発に乗ってLIFE壊滅の引き金となってしまった。
そしてパナを失った。

本人には当然、罪滅ぼしの気持ちがある。
ソマはそのことを知っていた。

「私もヱイユくんと同じ。
LIFEの敵を、生命に替えても倒さなければならないの。」

地上に魔族がはびこり、天上を悪魔が掻き乱す濁悪(じょくあく)の世相には、宇宙も乱れ、天体までが異変を現じた。

雲の多い空が妙に明るくなったので見上げてみると、赤い彗星が北東から南西へ、尾を引いていくのが見えた。

「こ、こんなこと、今まで・・・。」
「ソマさん、心を強く持って。
“LIFE”が広まる瑞相(ずいそう)と考えましょう。
大丈夫、タフツァさんも戦われているから・・・。」

ヤエはそう言って、自らの左手で右手の拳をぎゅっと握った。

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