The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 33 話
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スヰフォスやサザナイアの故郷ビオム村を目指して、ミルゼオ国を北上して行くソマの一団に、旅人からレボーヌ=ソォラの情勢が伝わった。

旧オフサーヤ宮殿の地下牢に捕らえていた悪魔結社マーラの術士たちが脱獄したという。

レンジャーのピスムと忍者ワダイルが潜行を志願してくれた。

「私達はアミュ=ロヴァの密偵です。
先回りして情報を集め、捕縛の陣を張っておきます。」

メレナティレまでザンダの一行を乗せた御者ノスタムが、現地復興にあたっていた二人をコダーヴ市に運び、ビオム村、ひいてはアミュ=ロヴァへも同行してくれるという。

「ノスタムさん、早馬車の任は私にお任せください。」

年配の御者に配慮して、自ら潜行部隊の移動を買って出たのは、ソマたちをコダーヴに運んだ青年御者のセリゥだ。

二頭立て六人乗りの箱馬車と、二人乗りの小型馬車の運転を交代した。

彼はすぐに荷台を仕立てて一頭立てハンサムキャブとした。
混雑をすり抜けるテクニックと、時短のためなら凸凹(でこぼこ)道も恐れない勇敢さを持っている。

先発隊を手を振り見送って、ビオムに近い山道を駆ける馬車の中、ソマとヤエ、デグラン、ベーミラは会議を行った。

「捕らえていた首領は、・・・奇術士ヨンド、怪人ラモー、魔具職人ハイボン、呪師フラハね。」
「そうです。
ケプカスは逃亡、フィフノスは行方不明。
ヒユルはどうなったのでしょう?」
「リザブーグの森で私と交戦した後、メレナティレにも現れたらしいけど、その後ヱイユくんも消息不明・・・。
フィヲちゃんは、ヒユルが死んでしまったと言っていた。
それなら、彼は今どこに・・・。」

デグランとベーミラはまだ、人としてのヱイユを知らない。

「シェブロン先生の入城前から、ピスムとワダイルはメレナティレに潜行してくれていました。
現地の人の話として、海峡に赤竜ゲルエンジ=ニルが出現したということです。
ヨムニフらの渡海を阻んでいました。
しかし毒に引火させた逆方向魔法で倒されてしまって・・・。
まさかそれが・・・!?」
「ヱイユくんの召喚だわ。
・・・そう、ヨムニフに殺された。
気丈に振る舞っていたけど、あれで優しいから、さぞ悲しかったことでしょう・・・!!」

弟子たちが各地で立ち上がり、同志を増やしながら“LIFE”を拡大する戦いに、ヱイユが果たした役割は限りなく大きかった。

それだけに難敵・強敵から狙われ、悪魔に追われる身となった。

ファラにはフィヲがいて、最悪の敵でさえ撃退してきた。
今はサザナイアも加勢する。
ザンダが後に続く。

誰かがヱイユを助けなければ。

ソマの脳裏に、アミュ=ロヴァをサウォーヌの先発・後発両部隊に任せて、自分だけはヱイユを探しに行くべきでは、と考えがよぎった。

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