第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
ワリヒの二人が植物の葉でできた傘を持ってきた。
フィヲは持参の携帯傘に、最初のアゴー女性と一緒に入り、手をつないだ。
二人のアゴー女性に両手を取られたファラのまわりにワリヒ男性が集まり、サザナイアはジェスチャが通じるかと試行錯誤しながらアゴー女性に語りかけた。
そのまわりをファラの魔獣たちが援護している。
雨に打たれているというのに、賑やかな歓談の声が広がったので、アゴー族の男性たちも様子を見に来た。
最初、訝(いぶか)しそうに見ていた一人に、アゴー女性が、フィヲが、またファラが声をかけると、たちまち笑い声が上がった。
人から人へ、特にワリヒ女性の名前が呼ばれ、村落に歓待の輪が次々と広がっていったのである。
ファラの提案で、荷車の食料を土産物として長老に届けることになった。
ここでワリヒの若者たちは、アゴーへ嫁いだ女性と再会することができた。
出迎えた長老が言う。
『返礼に宴を開こう。
今日は泊まっていきなさい。』
届けた食物の十倍、百倍という食物が振る舞われる。
民族の舞踊が演じられる。
フィヲとサザナイアも着付けてもらい、踊りを教わった。
こうして一夜に民族間の壁、心の距離は解消した。