第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
突然、ミュネフィの腹が上下に裂け、まるで口のようにヒユルの頭部を喰い千切った。
噛み砕かれて遺髪が散らばった。
胸部も喰い破られる。
惨劇を前に立ち竦んだヱイユが、剣撃を試みる。
またしても見えない障壁に阻まれる。
ヒユルの足が上を向いて、力なく喰い揺すられている。
トゥウィフを打ち込む。
見えない敵の、重低音の叫び声が起こった。
『グオォォォォォーーーン!』
叩き潰すまでだ。
剣にもトゥウィフをかけて連撃した。
すると透明だった怪物が実体を現した・・・。
ヒレがビクビクと動いている。
目の前に、血だらけになったクジラのような巨大生物が横たわっていた。
『ひどいこと、野生動物をこんなに痛め付けるなんて・・・。』
ヒユルの腐肉を捕食したミュネフィは、金色だった髪が黒くなっていた。
前髪をかき分けた顔を見て、ヱイユは血の気が引く思いがした。
それはヒユルの容姿をそのまま写したミュネフィ=リッドワッドだったからだ。
「ヱイユ、会いたかった。
あたしを抱いてくれるか・・・?」
これでは生前のヒユルよりも性質(たち)が悪い。
ミュネフィの怪力で掴まれればひとたまりもない。
上空へ逃れる。
アーダの姿になる。
一気に速度を上げる。
すぐ下までミュネフィの魔手が迫る。
方向を転ずる。
一撃を交える。
引き寄せられる。
もう一撃、打った反動で離れる。
ガルーダを召喚する。
距離が生まれる。
天候を乱し、雷雲を呼び寄せる。
驟雨(しゅうう)を降らして視界を遮る。
『そうやっていつも女を振り払うのね、フフフッ。』
彼は一時、オルブームから退避することにした。