The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 26 話
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『ザンダ、よくぞ人命を優先した。
後のことは士卒に任せていい。
君も自棄(やけ)を起こさず、生き抜いて皆と一緒に帰ってきなさい。』
『先生、でもおれ、まだ戦いたい、ファラ君やおねえちゃんのところに、行きたいんです・・・。』

シェブロンの微笑んだ顔が思い浮かぶ。
とっさに起き上がる。

そこは、オルブーム大陸ワリヒ領の海岸だった。

ナーズンが介抱する。
ダッツが立ち上がる。

「ザンダ様、お体は、ご無事ですか・・・!?」
「・・・ああ、うん。
大丈夫だ。
みんなは・・・!?」
「魔鳥は合成が解け、元の生体に戻りました。
今、医師が診療しております。」

マーゼリア大陸にはない生態系、・・・特に毒、を危惧して、同行させた医師たちが乗組員の安全を確保してくれた。

「合成生物に使われたのが、女性一人に男性二人・・・!?
意識は戻りますか?」

女医が微笑む。

「正方向の魔法陣を敷いています。
しばらくは苦しみますが、“LIFE”の力で回復するでしょう。」
「おれもレボーヌ=ソォラで間近に経験しました。
黒ローブに利用された人たちです。
騙されて実験に使われたか、自分から参加したか分からない。
先生たち、気をつけて!」

男性医師が応えた。

「医術もまた“LIFE”から生まれたものなのです。
私たちがその一点を過(あやま)たなければ大丈夫。」

二人の医師はかつてロマアヤでシェブロンに出会ったことがある。
ゼオヌール公の下(もと)でよく民を救った名医らは、当時から“LIFE”に感服して、自らの分野の根本法とすべきであることを知ったのだ。

シェブロンは若い医師に教えた。

「病気と言っても、人間の心に根強い『三毒』に原因があります。
『貪(むさぼ)り』『瞋(いか)り』『痴(おろ)か』の三つです。
この、生命が病む根源の毒を治癒していく必要がある。
だから“LIFE”を説き、広めるのです。
一方で、反“LIFE”は、それ自体に深い罪がある。
過去の悪しき行いが悪業となって、現在の心身に現れていることが多い。
これも“LIFE”によって治癒する以外ない。」

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