第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
砲弾は至近距離で爆発すると船にも衝撃があるため、射程距離に入った時点で撃つという。
『バリアだ。
攻守一体で戦うしかない・・・!!』
精神体魔族の先鋒が上空に到達し、暴れ狂った勢いで突進してくる。
ザンダが密集した空気の逆流を起こす。
抵抗と摩擦で悪魔が赤く燃え上がり、船に張ったロニネに当たって吸収された。
砲撃が始まった。
ベリオングの言う通り、放物線を描いて竜族を直撃した瞬間、付近に群がった有翼類が放射状に吹き飛ばされ、墜落していくのが見えた。
レッドドラゴンが旋回して真上に滞空する。
砲撃をかわす。
ザンダが外れた砲弾にインツァラを放つ。
意表を突かれた赤竜が背後の衝撃に遭って落ちてくる。
一時的に強化した攻撃型ロニネに、アイススパイクを張った。
冷却のピークは衝突の瞬間だ。
弾かれると同時に凍てついた赤竜の、ごつごつした鱗が砕け散る。
海峡にドラゴンの絶叫が鳴り渡った。
ドシン、ドシンと、後に釣られて有翼類がバリアに引き寄せられ、凍りつき、海へ落ちていった。
『大海よ、力を貸してくれ!』
水色の魔力が船を包み、術士であるザンダに注がれる。
左舷から砲弾が飛ぶ、右舷からも飛ぶ。
標的の距離が近く、船が音を立てて左右に揺れた。
波がバリアを越えて船を飲み込む。
平らな形状の船に転覆のおそれはないが、かなり右へ傾いた。
ダッツが転倒する。
ベリオングも甲板上を滑った。
ナーズン、バミーナは欄干にしがみついている。
「みんな、堪(こら)え所だ!
海に落ちないように、攻勢を作ってくれ!!」