The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」

第 20 話
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槍兵ダッツは舳(へさき)に立って双眼鏡を構え、対岸を見ていた。

メレナティレ港からオルブーム大陸ワリヒ領まで、さほどの距離ではない。

両大陸名を取って「マゼリ=オルブ海峡」と呼ばれる古くからの航路だ。

オルブーム側に港がないため、ロマアヤ艦には小型船が用いられることになった。

ザンダは以前、ファラとフィヲのために同型の船を手配したことがある。

ベリオングら、メレナティレへの先発隊がブイッド港から乗ってきたのをきっかけに、ロマアヤ公国との交易に使われるようになっていた。

「メレナティレでロマアヤ船に乗れるなんて、運が良かったな。」

ザンダが満足そうに言うので、戦士ポートルは光栄に思った。

「船乗りも皆、ザンダ様の家臣です。」
「ありがたいけど、ゼオヌール家も平等に公国の一員だよ。
国に帰ったら、“LIFE”の学校を建ててシェブロン先生の教えを基調にした教育に力を入れたい。
ポートルも力を貸してくれ。」
「もちろんです!」

海風が吹きわたり、帆を打ち鳴らす。
幸い、南寄りの風だ。
動力をほとんど使わなくて済む。

船室からベリオングも上がってきた。

「ザンダ様、私が見張りますので、今のうちに休まれてはいかがですか。」
「ありがとう。
短い船旅だし、景色を見ることにするよ。」

その時、ダッツが叫び声を上げ、右舷(うげん)のナーズン、左舷(さげん)のバミーナも振り向いた。

「来ました、あれは海鳥じゃない・・・!」
「人型も見えます!」
「首の長い竜が、あんなに・・・!!」

ザンダの肉眼にも黒い翼の群が見えた。

「よしっ、ロマアヤの単独作戦だ!
全部撃ち落とせッ!!」

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