第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 10 節「“LIFE”の一法とは」
師の呼び掛けに呼応した、弟子たちによる正法流通(しょうほうるつう)、人生価値の創造が成就すると、対して摩擦・反動・抵抗といった、ゼロ回帰が生ずる。
身を焼き尽くすほどの激しい反“LIFE”に遭うと、これまで強く“LIFE”を願い、志してきた人々に疑念が起こるのだ。
この疑念は、自己の敗北を正当化するのに都合が良くなってくる。
そして、この疑念こそが真実だと信じ、人にも語るようになる。
誰にも生ずる、胸中の“LIFE”と反“LIFE”の葛藤だけに、当然、勝つ者もいれば敗れる者もいた。
“LIFE”の師弟における、弟子の敗北こそが、最も残虐に“LIFE”を破壊する。
古代魔法術師ヨムニフは、シェブロンと同じ、ラオンジーウの弟子であった。
彼は元々、魔法を発動できない学者だった。
ある日、古文書に見出だした古代魔法グルガの発動法、及び何故世界から失われたか、について、師ラオンジーウに報告した。
師は、この弟子が何かにつけシェブロンを非難して、先を越そうとする性質を知っていたが、たとえ悪の根を持って生まれても、それは転換するべきものであって、排除してはならないと考えていた。
この思想は“LIFE”に起因するもので、弟子シェブロンも同じ考えを受け継いでいた。
「ヨムニフ、よく研究しているな。
その文字は使い方を過(あやま)てば最も危険な力となる。
しかし、正法を志すならば、グルガもまた必要な魔法なのだ。」