The story of "LIFE"

第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」

第 39 話
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ルアーズとアンバスが馬車でフスカ港へ立ち、海路ルモア港を目指す。

ソマとヤエ、ベーミラ、デグランは北北東に進路を取ってコダーヴ市に入り、そこでメレナティレからのピスム、ワダイルと合流する。

ザンダはオルブームへ渡海の準備を整えている頃か。

旧王城のテラスから、フィヲとサザナイアを見送った後、シェブロンとスヰフォスは大局について語った。

「皆よく使命を自覚して各地へ赴いてくれました。
この城下の青年たちも、まことに頼もしい。
南北の港とは通信網が役立っています。」
「グルガが開放された頃、ワシはビオムにいて、異変に気付くこともありませんでした。
当時も空に翼竜が・・・?」
「いえ、精神体の悪魔の群が覆っていたのです。
今も竜や鴉(からす)、合成生物に混じって、悪魔たちが“LIFE”を狙っています。
ファラ君やヱイユ君は交戦したようです。」
「魔力を持たない者が悪魔などに抗えようか・・・。」
「過去、悪魔は人間にとって不可抗な存在でした。
しかし私たちには究極魔法陣があります。
魔力の消耗はありません。
ただ“LIFE”を願い、自身の勝利を信じられるか否か。
悪魔の本質とは、人々本来の願いを破壊し、他の目的へと目を向けさせ、人道において惑わせる。
そして自身の究極というものを忘れさせる、捨てさせる、あきらめさせる。
結句、最後の勝利を疑わせてしまうことなのです。」

中世以来、駄目だ無理だと、人々をして宿命的なあきらめへと貶(おとし)め続けてきたものを、“LIFE”の生命哲理によって転換しようという。

スヰフォスは、先にシェブロンが「不可抗」と言った悪魔のはたらきを感じ取ると同時に、その力がいかに強力に、人々を圧(お)し潰すほど作用しているか、をも感じて身を震わした。

「“LIFE”の祈りには元々“音律”があるのです。
音声(おんじょう)は決して大きくなくて構わない。
そのことを万人に教える必要がある・・・。」

石段を一歩一歩踏みしめるように、警備長ワヌアスが上がって来た。
立て膝を着いて敬う。

「先生、タフツァ殿から騎士団にいただいたお手紙です。」
「これは、・・・彼以外の騎士が、テンギと交戦したようですね。
見事な証明じゃないか・・・!!」

シェブロンには、万人の内なる“LIFE”は本来、世界最強の力であって、これを持ってすれば、相手がいかに凶悪な鬼神と言えども打ち倒せないはずがないという、揺るがぬ確信があった。

しかし、万学万法を修した者にしか“LIFE”を実現できないとしたら、一体それが何になろう。

理論は分からなくとも、人間らしい願いの現れとして“LIFE”を信じ、用いた者が、その偉大な力用(りきゆう)を発揮してこそ万人を救い得る。

今、愛弟子のタフツァが同じことを感じて全軍に徹底しようとしていることが頼もしく、嬉しかった。

「いよいよ来るぞ、真実の、“LIFE”発現の時が・・・!!」

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