第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
復興の槌音が高まるミナリィ港で、ナズテインは通信中だった。
リザブーグ城のスヰフォスとである。
『学師様、各方面への出立(しゅったつ)はいかがですか。』
『サザナイアの特訓に時間を割いた。
フィヲさんと、ここを発ったのは一番後だが、・・・もう着いているかもな。』
『それは・・・!?』
実際に“光”となって移動するのは、ファラ、フィヲ、そしてサザナイアだけが体験している。
今回はシェブロンとヴェサ、スヰフォスも立ち合いの元、飛び立って行った形だ。
『フィヲさんを信じるしかない。
光速での移動とは・・・。』
『えっ、高速、ですか!?』
ミナリィにはLIFE騎士団の多くが集結しており、交代で警備と復興の任にあたっている。
『上陸に伴う港湾施設の破損ですが、修復の目処が立ちました。
これより南西の塚を含めた広域へ、LIFE騎士団の展開を行います。』
シェブロンが通信口に来た。
『旧帝政を挫(くじ)くためとはいえ、住民の皆さんには多大なご迷惑をお掛けしてしまいました。
どうか私に代わってお詫び申し上げていただけませんか。』
『シェブロン先生、畏(かしこ)まりました。
作戦は弟子一同で決めたものです。
私たちに非がありますから、LIFE騎士を代表して私が各戸へ伺うようにいたします。』
『各地に魔族が姿を現し、危険な竜族の影に怯えておられることと思います。
その原因と、この世界が向かう先について、ご苦労をお掛けしますが、高齢者から子供たちに至るまで、お伝えいただきたいのです。』
『重々、承りました。
必ずそのようにいたします。』
騎士道に生きる者の潔(いさぎよ)さ、その誓願のなんと清々(すがすが)しいことだろう。
再びスヰフォスが発言する。
『城下では新たな騎士の育成と、非戦闘員が敵に遭遇した際の自己防衛を徹底する。
少なくともLIFE騎士の力が及ぶ全域で、犠牲を出さない攻防戦を頼むぞ。』