第 10 章「無量義(むりょうぎ)」
第 09 節「本有(ほんぬ)の発現」
テンギの周りで風が渦巻く・・・。
落ち葉や枝が吹き上げられる。
騎士たちも、立っていられなくなってきた。
体が宙へ引き上げられ、足が地面から離れる。
「竜巻だ、屈(かが)めッ!!」
隊長の声だが、間に合わない。
馬車から駆け降りたタフツァが、瞬時の判断で騎士たちにロニネをかけた。
複数への同時発動だ。
「ウィロ、自分と馬を守ることだけ考えろ!」
「は、はいっ!!」
少年が馬車を御(ぎょ)して後方へ退避する。
タフツァは動ぜず風をも受けず、スタスタとテンギに近寄っていった。
手の一振りで現象が変化し、握る素振りで竜巻が細く狭められた。
「ぐほっ・・・!!」
三メートルの巨体が旋回しながら持ち上がっていく。
もう一方の手で、テンギにゾー(重力)をかけ、上昇し過ぎないようコントロールした。
彼は騎士たちが無事に着地するまで待って、テンギに言い放った。
「お前の力はこんなものか。
ホッシュタスの操り人形め!!」
旋風の威力を上げる。
ゾーも強める。
大地へ還るエネルギーの流れができた。
そしてタフツァに注がれる。
回転が止まらなくなった所で、風を収め、無重力状態を作り出す。
急速な流出により、意識を失ったまま、テンギは宙で回り続けた。
味方の安全を確保して、しばらく回しておくと、大地への供給が止まりかけてきた。
さすがに吸いきることはしない。
発動不能、戦闘不能まで追い込んだ所で回転を止めると、徐々に無重力を解いて、テンギが目を覚まさぬよう、ゆっくり地面に横たえた。